フランスでは、ホクロは美しさを引き立てるための道具だ。

 フランス人ですら、何と美しい名だと思うという「美の豆(粒)grain de beauté」はホクロのこと。漢字で「黒子」と書く日本人のホクロ感とはほど遠いようだ。フランス人は、ホクロを美貌(びぼう)の道具立てとして数え、あでやかな美しさの一つとして大切に扱われている。日本だとホクロは、美貌の足をひっぱるものとして、「黒子」の存在を否定し、とりたいと願う女子も数知れない、ネガティブな存在だ。
 今も昔も見た目の美しさを気にするのは、どこの国も同じ。18世紀のフランス貴族社会では、ホクロは、外見を印象付ける手段として関心を集めていた。生れつきホクロのないマダムたちは、「ハエmouche」と呼ばれる付けボクロに頼った。この付けボクロ、推理小説などにも事件のてがかりとして、よく使われるようになったそうだ。
 ホクロの形はさまざまで、星の形をしたものまである。だが、その色は肌の色素と関係しているためか、ヨーロッパ人とアジア人では違いがみられるようだ。そういえば、透き通るような色白肌のフランス人に、「ホクロも一緒に日焼けした!」と自慢されて、驚かされたことがあった。
 ところで、手相と同じように、「ホクロ占い」というものもある。額にホクロがあると知的になる、足の裏にあると旅の多い人生が待っている…など。フランス人も多かれ少なかれ興味をもっている人が多い。最近パーティで、日本アニメのコスプレを着て、額の中央にお釈迦(しゃか)さまのようなホクロを付け、両手を合わせてはお辞儀をしながら、「アリガト~」とジョークを飛ばして楽しんでいるフランス人を見かけた。ホクロはどこまでも「grain de beauté」のようだ。(有)