ルリユール(製本)工房 — 製本家には忍耐力がいる。

 人影もまばらなパリ11区の路地に、突如、目も覚めるようなブルーの外観のアトリエが目に飛び込んだ。ここは、古く傷んだ本を修繕したり、世界で一冊の装丁の本を産み出すルリユール(製本)工房だ。見慣れない製本用マシーンの隣には、ハサミ、ピンセットといった小道具が、機能的に並べられている。「製本家になるにはキレイ好きでないと。あとは忍耐力が必要。せっかちはダメだね」。一口に製本の仕事といっても、30から40にもなる細かな行程がある。その全段階を、落ち着いてキッチリとこなしていくことが大事なのだと、工房の主ジャッキーさんは、静かに語る。
 今や誰もが認める実力者だが、意外にも20代は普通の会社勤めをしていたとか。しかし読書と古いものが好きだった彼は、三十路の声を聞くと同時に、一念発起して製本の講習に通い出す。初めて製本道具に触れた時、「これが天職」と瞬時に理解した。比較的遅いスタートながら、器用な彼はすぐに頭角を表す。経験20年の今では、月、火は学校で後輩指導にあたり、水から土はアトリエで仕事をこなす多忙な日々だ。そしてルリユール界を代表し、伝統芸を紹介するため海外に赴くことさえある。1996年にはパリの姉妹都市である京都に招かれたことも。「日本人は技術に対してレスペクトの念が強い。2時間も立ち止まって見ていた人さえいた。フランスだったら、すぐに『私の家族が同じような本を持っている』だとか、自分のことを自慢したがるんだけどね」
 そんな彼の明日への活力となるのは、なんといっても、客の喜ぶ顔に尽きるという。「だから本が仕上がった時に、お客さんの反応を見るのが一番の楽しみさ。わざわざ函(箱)からゆっくり開けて、ちょっと焦らしてみせたり…。僕もさりげなく演出をしてるんだよ」(瑞)
Jacky Vignon RELIURE : 
2 rue Gonnet 11e  01.4464.7828

ばらばらだった紙の束を、特製のかがり台を使って糸でかがれば、本も壊れにくい。


「耳だしマシーン」でしっかり押さえながら、トンカチで叩いて本の背中に丸みをつける。


キリで穴をあけ、糸を通し表紙を付ける。


「今度の本の函は、こんなモチーフにしようと思ってるよ」


 

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