今回は、さりげなく実施されているユネスコ(国際連合教育科学文化機関)のガイド付き見学会に参加。まずはユネスコの理念や活動を紹介した短編映画の鑑賞からスタート。ユネスコは大戦直後の1945年に創設され、教育、科学、文化への取り組みを通し、平和の実現を目指す国際機関である。有名だが、本部がパリであることは意外と知られていない。 続いてフランス語ガイド担当のニコルさんとともにY字型の本部庁舎を出て中庭を通り、天空にそびえる石版を眺める。石版にはユネスコ憲章前文の「戦争は人の心の中で生まれるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」という一文が、10種類の言語で刻まれている。日本語はない。ニコルさんによると2005年、日本はユネスコ総予算の40%を出した重要な国。しかも現在の事務局長は松浦晃一郎氏だが、こういう時には黙殺されるのか。だがその後は、日本人ビジターのご機嫌をとるかのように、日本関係のお宝が続出。イサム・ノグチの日本庭園、長崎から来た天使の頭像、安藤忠男の「瞑想の空間」…。 それから再び庁舎に入り、第一会議場を見学した後、ル・コルビュジエのタペスリーやミロの絵画を鑑賞。だが、目玉のひとつであるピカソの絵には、サインがない。「遠くから見ると、建物の設計の都合で絵全体が見えなくなり、ピカソが怒って除幕式当日に、サインやタイトルを付けることを拒否しました」とニコルさん。芸術家の気持ちもわかるが、ここはユネスコ。ピカソに思わず、「戦争は人の心の中で生まれるらしいですよ」と教えてあげたくなる。 そして見学終了後、立ち話からニコルさんがまったくのボランティアとしてガイドを引き受けていることを知る。しかも英語ガイドは職員が担当しているから、きっちり報酬を受け取っているというのに。ピカソの絵より、無欲でサンパなニコルさんの振る舞いから、心の平和を学んだ気がした。(瑞) 離れると全体が見えなくなるのでピカソが激怒した絵。 Service des visites de l’UNESCO : |
ミロの絵の前でガイドするニコルさん。 ユネスコ憲章の前文。 イサム・ノグチの日本庭園で、松の木を手入れする職人さん。「日本から着いたばかり。2年に1回来ます」 |