私の子供時代にくらべて、ミラは他人と濃いスキンシップをする。男女限らず友だちと、いつも手をつないだり肩を組んだりしている。もちろん大人から抱きしめられたり、ビズされたりも日常茶飯だから、他人と体が触れ合うことに、ほとんど抵抗がないように思える。反対に一時帰国時など、ミラは大人から「大きくなったね」と頭は撫でてもらえても、抱きしめられたりチューをしてもらえることはそんなにない。彼女にとってそのような日本人的スキンシップは、もしや物足りないのではないかと思う。
アイデンティティとは、母国語とか国籍の問題をこえ、何が自分にとって自然でしっくりくるかといった微妙な感覚と深くつながっている。だから、たとえ日本国籍を持ち日本語を上手に操っても、フランスに住んでいる限り、子供はフランス的なアイデンティティを体にしっかりと刻んでいく。なんとなく今まで「自分の子は自分が一番理解してる」と自惚れていたけれども、成長するにつれフランス的な行動パターンを次々と見せる娘を前に、そんな自信も揺らぐ。これから我が子が徐々に正真正銘のフランス人になっていくという未知の不安と、どうやって向き合えばいいのだろう。ここは割り切って、子供が伸び伸びと成長することを一番に考え、一抹の寂しさと、大いなる好奇心を道連れに、じっくりと見守るのが良いのだろうか。(瑞)