舞台ではサッカーの試合中、青と赤のユニフォームが入り乱れ、赤側が攻勢のようだ。守勢の青側のディフェンスの一人が「守る」ことの不安を話し始めると、先輩だろうか、もう一人が諭すように語りかける。赤側にはこれが最後の試合、という引退間際の選手がいるが、選手自身はそのことをまだ知らない。監督と心理カウンセラーが何やら話し合っているところへ補欠が加わり、会話が賑やかになる。青側が1点リードする中、終了まであと2分でどんなドラマが生まれるのだろう? サッカーを介して人間心理を探る、この一風変わった戯曲の作者はフレデリック・ベリエ=ガルシアとエマニュエル・ブルデュー。ガルシアは母ニコル・ガルシア監督作品の脚本を、社会学者ピエール・ブルデューの息子エマニュエルは映画界ですでに脚本執筆と演出を行っている。この二人に加わったのが、コメディー・フランセーズの専任役者で弟ブルーノの作品他映画界でも活躍するドニ・ポダリデス。三人の名が連なるのを見て「七光り?」、「今、流行の」という気もしたし、サッカー知らずの私には向かないかな? とも思ったけれど、観賞後の後悔はゼロ。サッカー選手だけに限らず、人間には「ここが勝負」という瞬間があるはずだし、真剣勝負の中にもどこかで迷いを私たちは感じているはずなのだ。そのことをうまく分析し、サッカーという器を借りながらコメディーに仕立て上げる、という彼らの手腕に感心した。ジャック・ボナフェ、エリック・ベルジェ、ジェローム・キルシャーなど、よい役者が揃っている。ただ不満がひとつ。それは女性が一人しか登場しないこと。これってサッカーの世界と同じくマッチョすぎやしない?(海) |
4月14日迄。火-土21h、日15h 。 |
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