Gilles Noussenbaum 一般医 13区は大きく変貌。

 イタリー広場を南に数分、ショワジー大通りに診療所を構える町医者のジルさんは、
生まれも育ちも生粋の13区民。ヨーロッパ最大規模のチャイナタウンを誇る、活気溢れるこの街は、数十年の間に大きな変貌を遂げた。昔は「ジャン=ピエール・メルヴィルの描く暗黒街の世界、そのままだったんだ」という13区は、犯罪の絶えない殺伐とした空気が漂っていた。70年代初めの都市開発によって、空き地に次々と高層ビルが立ち並んだが、悪評高いこの地にフランス人は見向きもしなかったという。75年くらいに、ベトナム戦争やポル・ポト政権の虐殺を逃れてやってきた東南アジアからの移民たちが根を下ろしたのをきっかけに、アジア・コミュニティが形成されていった。
 所変われば、同じ13区でも、ビュット・オ・カイユ界隈などに、現代のパリとは思えない田舎の情緒が色濃く残っている。「まずは散歩に出掛けて、わざと道に迷ってみるんだ。そこには予期せぬ発見があるんだよ」。例えばスクエアをつなぐすべての通りに花の名がついたシテ・フローラル。蘭、藤、アイリス、昼顔と名づけられた小道の両脇には、こぢんまりとした一軒家が立ち並び、まるで箱庭のよう。ここからモンスーリ公園への道のりが、ジルさんのお気に入りコースだ。ノスタルジックな情景のすぐ横には、高層ビルがそびえ立つ。そんなコントラストも、13区の魅力の一つ。
 医者になった理由は? との問いには「人の命を救いたかったから」と照れくさそうに笑いながら、「僕は庶民の出だから、社会的階級を上げたかった」という。ここ最近は、仕事帰りの一杯のフォーもおあずけで、この春産まれたばかりの愛娘の顔見たさに、自宅に一目散の日々。「早く娘を連れて、町中を歩きたいんだ。パリの風景がすっかり変わってしまう前にね」(咲)

●Laurent Duchene
 大の甘党であるジルさんが推薦するパティスリー兼パン屋。10年間コルドンブルーで教鞭をとった、ご主人のローラン・デュシェーヌさんは、フランス最優秀職人の称号を持つ菓子職人。ふんわりラム酒の香る繊細な口当たりのクリームが嬉しいミルフィーユや、この秋お目見えしたばかりの「キャラメル・パッション」は、コリアンダーとパッションフルーツの香りがアクセントになった逸品です。石臼で挽いた小麦から作られたバゲット・エクスキや、クロワッサンなどのヴィエノワズリーも美味。(咲)
2 rue Wurtz 13e 01.4565.0077 M。 Glaciere
7h30-20h、日休。

あっちの水はからいよ?

セーヌ・エ・マルヌ県の250市町村の水が水質の基準値に達していない上に、そのうちの80市町村の水道水は飲まないほうがよい、と緊急発表された。その原因の一つは、農業用の殺虫剤を主に、その他に硝酸やセレン、フッ化物などが基準量より多く混入しているということらしい。話題になった9月のTVで「われわれの撒く薬品が地下にしみ込み水道水に混じるのはあたりまえでしょうね」とトラクターを操作しながら野菜生産業の人が語っていた。
パリの水は、Dreux、Fontainebleau、Sens、Provinsなど8カ所の原水が水路を通ってメニルモンタンやモンスリなど5つの貯水場にたどり着く経路と、川から取水する方法がある。セーヌの水はIvryとOrly浄水処理場、マルヌの水はJoinvilleで浄化される。右岸はCompagnie des eaux de Paris、左岸はEau et force(Suezグループ)という民間会社が配水を請け負っている。区やセクションによって水源も水質も違うのだから、味も違うことだろう。しかし、原水の水質が良くても、居住している建物の水道管が古く、そこで汚染してしまうこともある。水の質は年々良くなっているということだが、バイオテロに備えて塩素を多めに入れるとか、地区によっては、社会衛生県管理局(Ddass)の認証する“良質水”だが“乳児の飲料用にはすすめられない”…というコメントはとても気になるところ。(麦)
– www.sagep.fr “EAU DE PARIS”
住んでいる地区の水質の数値も調べられる。
– www.assemblee-nationale.fr/12/rap-info/i1097.asp
“Assemblee nationale, Rapport d’information, sur le bioterrorisme” II-5


老朽建物の水道が不衛生だったので市が設置した路上の水道蛇口。
この建物は8月に火事になってしまい、住民の姿も水道口ももうない。