7月7日8時47分、ロンドンの地下鉄線3カ所、9時45分にバスを、同時爆破テロが襲い死者56人、負傷者約700人を出した。この同時テロは、スコットランドで開催中だったG8サミットに合わせた威嚇行為とも、英国のイラク戦争加担への報復ともみられる。しかし、ついに、というより来るべきものが…ととらえる英国の治安・テロ専門家が多い。 7月12日、犯人とみられる1人はテロ1時間前にロンドン北西ルートン駅の監視カメラが、テロ数分前には他の3人とともにキングズクロス駅でも監視カメラが撮影。容疑者4人とも自爆したとみられる。彼らはパキスタン系英国人で、父親とフィッシュアンドチップス店を営む者から小学生や障害をもつ児童の補習指導者まで完全に社会に同化している点で、昨年マドリードでのモロッコ人など外国人による同時テロと異なる。 英国は伝統的に多文化・多宗教社会を自認し、イスラム教徒だけで約160万人。アルジェリアやサウジアラビア、モロッコ、アフガニスタン、パキスタンなどの原理主義活動家たちは祖国でのテロやジハード扇動容疑の追及を逃れ、英国に亡命、帰化している者も多い。サラフィスト・グループやムスリム同胞団などの過激派はロンドン北部のフィンズベリーパークにあるモスクに集う。異教徒・無信仰者社会へのジハードを扇動する説教師らに対しなんら当局の規制はなかった。英警察は彼らに言論の自由を保障するなかで情報を掴むという手段をとってきたようだが、ブレア首相は今年5月に再選をねらってか、2月に同モスクを一時閉鎖した。が、調査の対象だった過激派活動家らは雲散し「見えざる敵」となり各地に散って行った。今回のテロは、国内のアルカイダ志願者が初めて内部で自爆テロを行った例でショックは大きい。国産テロリストと国際テロ組織とのつながりをどう断ち切れるかがEU諸国の今後の課題に。 先の同時テロ2週間後の7月21日9時頃、またしてもロンドンの地下鉄線3カ所とバス内で同時爆発(1人負傷)と未遂。翌日地下鉄車内で私服警官が1人の男性を射殺。同時テロとは無関係のブラジル人と判明したが、英警察は、疑わしい者の射殺も辞さない警戒態勢に。23日深夜、エジプトのリゾート地シャルムエルシェイクでは3カ所で爆発し、外国人観光客を含む80人以上が死亡。 ブッシュ大統領の率いる対テロ戦争「十字軍」に対し、アルカイダ分子はジハードの旗を掲げ、いつでもどこでも棲息するアメーバのように、爆破テロというゲリラ戦争に世界市民を巻き込んでいくのだろうか。(君) |
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