15世紀、酒盛りの席で歌われる風刺唄として生まれたヴォードヴィルvaudevilleは、17世紀には唄とバレエが混ざった劇に形を変え、19世紀半ばには軽い通俗劇として定着し人気を呼んだ。ヴォードヴィルを有名にしたウージェーヌ・ラビッシュ、ジョルジュ・フェードーほど名は知られていないが、この「L’Habit vert」の作者ロベール・ド・フレールとガストン・アルマン・ド・カイヤヴェのコンビも、自分たちが生まれ育った環境である貴族とブルジョワ社会を風刺する劇を発表し、今世紀のはじめに成功を収めた。タイトルの “Habit vert (緑の燕尾服)”は、アカデミーフランセーズの会員たちが身につける正装を指す。美しい妻をかえりみずアカデミーの運営にしか興味のない公爵と、若い愛人から捨てられてばかりいる公爵夫人をとりまく政・財界の名士、芸術家たちのサークルが描かれる。公爵婦人の恋愛、アカデミーの新会員選び、愛人の浮気、任命式…速いテンポで話はどんどん巧妙に進んでいくけれど、難しい話ではないし、滑稽であることに徹しているので意外とわかりやすい。これもヴォードヴィル劇の特徴。 最後に登場する軍隊行進は、ベルエポックの終焉を象徴しているが、行進を見物するのんきな公爵夫婦一行の表情には戦争の影もなければ一抹の不安すら浮かんでいない。 ぴたりと呼吸の合った演技を見せる役者たちはみな甲乙つけがたいが、 英語訛りのチャーミングなフランス語を話す公爵婦人を演じるアンドレア・レッツ=ルイエは、この時代に本当に生きていたのではないかと思えるほど適役で特にいい。演出はアンヌ=マリー・ラザリニ。(海) 火金土20h30 水木19h00 土日16h00 80F / 150F
●Les muses orphelines
●A tort et a raison |

15世紀、酒盛りの席で歌われる風刺唄として生まれたヴォードヴィルvaudevilleは、17世紀には唄とバレエが混ざった劇に形を変え、19世紀半ばには軽い通俗劇として定着し人気を呼んだ。ヴォードヴィルを有名にしたウージェーヌ・ラビッシュ、ジョルジュ・フェードーほど名は知られていないが、この「L’Habit vert」の作者ロベール・ド・フレールとガストン・アルマン・ド・カイヤヴェのコンビも、自分たちが生まれ育った環境である貴族とブルジョワ社会を風刺する劇を発表し、今世紀のはじめに成功を収めた。