料理本やエッセーの執筆、さらには人気レストラン『Le Passé simple』のシェフとして多忙をきわめるパトリス・ジュリアン氏(45)。
彼の2軒目の空間『Le Jardin de Julien』が、よこはま東急百貨店<クイーンズ・イースト>内4Fにこの秋オープンした。開店間近のある日、ジュリアン氏を訪ねてみた。
「デパートでの買い物は疲れる。ですから白いスペースを考えました。ここでランチやお茶を愉しみながら<庭>を空想して、リフレッシュしてもらいたいんです。だからあえて植物はおかない」
ところが壁にかけた自作のモノクローム写真は庭仕事の道具が被写体。それぞれに庭や人生についての一言が添えられ、彼らしいエスプリが利いている。エントランスも意表をつく鋳鉄による柵と石畳で、パリの街角をさりげなく演出。
「外からは見えないので、中に何があるのかという好奇心と、ビックリを感じてもらいたいですね」
食べ物のメインは自家製フォカッチャのサンドイッチとオリジナル・サラダ。ピカピカの厨房ではパティシェたちがお菓子作りに余念がない。スタッフはマネージャーの宰務陽子さん(24歳) はじめ、みな若い。
3年前、P. J.氏は解体寸前だった白金台の日本家屋に、手作り感覚によるフランス文化センター<サントル・フランセ・デ・ザール>を開いて、本欄にも登場している。当時の心境と近未来の夢を最後に聞いてみた。
「…遠い日のことのように感じる。あのころはまだ”種”のようだったから。東京に田舎風の家、横浜に庭と、種が徐々に芽を出して、この次は大好きな鎌倉の自然の中にスパのようなプチ・オーベルジュを作れば、ボクは立派な木になれるネ(笑)」
種が樹木となり、葉の生い繁る日が待ち遠しい。 (マ)