
憲法評議会は8月14日、15歳未満の未成年に対しSNSへのアクセスを禁じる法案を、表現の自由およびプライバシーを侵害するとして違憲と判断。マクロン大統領は同日、憲法に抵触しない新たな法案の策定を政府に要請した。
この法案は、SNSの弊害から子どもを守るためマクロン大統領の肝いりで策定され、7月21日に国会で可決・成立した。施行が予定されていた9月以降は15歳未満はフェイスブック、インスタグラム、X、TikTokなどのSNSに新たなアカウントを作成できなくなり、来年1月からは既存アカウントも使えなくなるはずだったが、表現の自由やオンライン上の匿名性が失われると、服従しないフランス党(LFI)や一部の社会党議員が憲法評議会に提訴していた。
憲法評議会はSNSの弊害から未成年を保護する必要性を認めつつも、第1に、すべての15歳未満の人にあらゆるSNSへのアクセスを禁じることは、弊害のリスクが証明されていないプラットフォームにも適用される上、15歳未満の若者の年齢や成熟度の違いを考慮せず、親が子にとって有益と考えるSNSの使用すら認める余地もないこと。第2に、15歳未満禁止となると、SNS利用者全員が身分証明書などにより年齢を証明しなければならなくなりプライバシーの侵害となる。以上2点から違憲と判断した。
LFIや社会党の議員は一様に違憲判断を歓迎。「法案はあまりにあいまいで広範囲に過ぎる」との意見も。中道与党のなかでも禁止は危険な機能に絞るべきとの見方もある。マクロン大統領は来年春、自身の任期中の成立を目指して、法的な問題をクリアした新たな法案を早急に策定するようルコルニュ首相に要請した。
スペインなど欧州連合(EU)他国でも子どものSNS禁止の動きがあるが、フォン・デア・ライエン欧州委員長は、近く未成年のSNSアクセスを制限するEU法案を提案すると7月に発言。詳細はまだ明らかではないが、未成年のSNSアクセスを段階的なものにする意向だという。2022年に制定されたEUデジタルサービス法(DSA)は、加盟国間での完全な統一規則を定め、各加盟国が個別のプラットフォーム事業者に新たな義務を課すことはできない。EUは未成年のSNSアクセス制限に関しても、未成年全体に使用を禁止するのではなく、有害な機能を排除して年齢に応じて調整することを目指しているようだ。例えば13歳未満には禁止し、それ以上18歳までは各国で定める「安全な」サービスのみ提供できるといったやり方だ。
米国では29の州がフェイスブックとインスタグラムに子どもを意図的に依存させたとして損害賠償および 「いいね」の数の表示や無限スクロールを廃止するなどの変更を求めてMetaを提訴した裁判が18日に開始。昨年12月に16歳未満のSNS禁止を立法化したオーストラリアでは、10~15歳の子とその親を対象に2025年末から翌年春までに行った調査によると、80%の子が禁止されたSNSを使っている。それは、プラットフォームがユーザーの年齢を確認しなかったり、年齢を間違って認識するためだという。こうなると、プラットフォームの良識と協力をあてにできるのかという問題も浮上してくる。有害な機能やコンテンツの削除を求めることを地道にやっていくしかないのか、いたちごっこに陥らないのか…難しい問題だ。(し)
