
ジロンド県では22万人が避難を強いられた。
5月下旬、6月後半、7月前半と、前代未聞の3度の猛暑の波に見舞われたフランスはインフラや社会インフラの脆弱さが露呈し、政府の無策や怠慢も指摘された。今後さらに厳しくなり得る猛暑への政府の本腰の対応が問われている。
5月21~30日の猛暑では、26日の1日の平均気温が24.9℃と5月と、フランス史上最も暑い日になり、6月17~28日の猛暑では1日の平均気温が30℃に達する仏観測史上で最も暑い3日間があり、南西部では44℃を記録。25日には最高段階の赤色警報がパリを含む72県(96県中)に発令され、本土人口の77%にあたる5100万人の住民が対象に。さらに7月4~16日は、大西洋岸や南仏では40~43℃が観測された。仏保健当局によると、6月17~7月2日では通常より5764人も死者が増えた。
5月から始まった長期間の猛暑の反復により、さまざまな問題が一気に噴出した。6月の猛暑では、全国で1万3500の小中高校が休校や授業時間の変更を余儀なくされた。窓に日よけのエマージェンシーシートを貼るなどの応急措置がとられたり、大学入学資格試験(バカロレア)の口頭試験が延期されたり学校の地下駐車場で行われたりした。教育省は来年からすべてのバカロレア試験を午前中に行うと発表したが、場所や人員の確保などが可能かと懸念の声も上がっている。病院の建物も全国で6割は老朽化して猛暑に対応していない。政府は緊急対策として7月上旬までに公立病院に3万台のクーラー設置を約束していたが、結果的には7500台に。その他、パリなどでは老朽化した地中埋設電線が温度上昇で損傷したり、空中の送電線も37%が暑さに弱いために停電も発生した。

さらに高温と乾燥により森林火災が頻発し、1月以降7月22日までの出火数は例年の75件に対し311件。27日までに例年の10倍以上の11万6085haが焼失した。パリ郊外のフォンテーヌブローの森、南仏(オート=アルプ、マルセイユ北、エロー県)、南西部ジロンド・ランドなどのうち、ジロンド県だけでも7月22日以降4.2万haが焼失しており、ジロンド・ランド県では観光客も含めて計25万人が避難する事態になった(27日現在)。
こうした事態に、ルコルニュ首相は6月25日、公立病院への緊急対策として太陽光の遮断や扇風機、クーラーなどの設置に1億€、今後10年で病院の猛暑対策に6億€を費やすと述べた。さらに、要介護高齢者施設の質の向上のための1億€の基金のうち冷房設備を優先し、さらに学校などには断熱工事、太陽光遮断、扇風機、冷房などに資金を投じると約束した。これに対し、エコロジスト党議員ら56人が7月2日に内閣不信任案を国民議会に提出。西ヨーロッパは温暖化のペースが速いと気象学者は数十年前から警告しており、猛暑の激化やとるべき対策も知りつつ政府は実行しなかったというのが理由だ。結局、不信任案は6日、賛成132票で否決されたが、気候高等評議会も9日、気候問題への対策が不十分だとして政府を批判した。
反対運動の激しかった高速道路A69建設の続行、建物のエネルギー効率向上工事への奨励金予算のカット、農業の大規模化促進、水不足への無策など、気候問題への近年の政府の対応はむしろ後退している。今回の猛暑は、気候問題が人の命や社会に与える影響が甚大であることを白日の下にさらした。政府の本腰の対策が待たれる。(し)
この夏、ひんぱんに使われたフレーズ「Qui aurait pu prédire? 誰も(このような状況になることは)予測できなかった」(フレーズ自体は2022年)は、ウィぺディアにもページができた。80年代後半から科学者は警告し続けてきた。今さら「知らなかった」とは言えない。こちらは国立視聴覚センターによる、科学者たちは予測していた検証ビデオ。
