
2007年の大統領選挙の際にカダフィ政権のリビアから不正な選挙資金を得ようとしたとして有罪になったサルコジ元大統領(70)は10月21日朝、パリのサンテ刑務所に収監された。元大統領の弁護士は直ちに仮釈放の申請を提出した。
大統領経験者が収監されるという前代未聞の事態に、サルコジ氏の息子たちの呼びかけで数百人がパリ16区の同氏の自宅付近に集まり、拍手や国歌で支援を表明した。同氏は刑務所に向かう車中で「今朝、幽閉されるのは元大統領ではない。無実の人間だ。この司法スキャンダルを非難し続ける」などとXに投稿した。
違法選挙資金疑惑の裁判の判決はパリ軽罪裁判所が9月25日に下した。サルコジ元大統領は2007年の大統領選の資金を得るために当時のリビアのカダフィ政権への働きかけを側近にやらせたとして禁固5年の実刑および罰金10万€、5年間の被選挙権、市民権、公民権剥奪を言い渡された。サルコジ氏はすぐに控訴したが、裁判所は「国民の信頼を裏切る、当件の例外的な重大性のため」この判決の仮執行を決定し、10月21日の収監が決まった。裁判では資金がリビアを出たことは確認できたが、サルコジ氏の選挙資金に流れたことは証明されなかった。他には、ゲアン元大統領府事務総長に禁固6年、オルトフ元地方公共団体相に禁固2年、仏=リビア間の仲介役を務めたアレクサンドル・ジューリ被告に禁固6年(即日収監)など8人が有罪となった。
この判決に対し、サルコジ氏がかつて総裁を務めた右派の共和党からは「政治的な判決」であり、控訴審を待たずに第1審後に収監するのは推定無罪の原則に反するやり方などと強い批判が噴出した。ルタイヨー前内相/共和党総裁は「サルコジ氏はフランスに多くをもたらした。国の忠実なしもべだ」と擁護。第1審の仮執行で被選挙権を失ったルペン氏の極右・国民連合(RN)のケースも強く批判。こうした批判の渦は判決を下したパリ軽罪裁判所の裁判長に対してSNS上に「死の脅迫」が投稿されるまでにエスカレートし、検察はこの件の捜査を開始した。
さらに、元共和党のダルマナン法相がサルコジをサンテ刑務所に尋ねる意向を示したことに対し、司法官組合は「司法官の独立性を損なう行為」と反発。法相は元大統領の身柄の安全を確認するのは自分の職務でもあると反論した。左派は、元大統領を刑務所に訪問するのは司法の権威に疑問を投げかける行為だと非難した上、重大な罪で有罪となったサルコジ氏を収監4日前にマクロン大統領が大統領府に招いたことは「司法への圧力」につながると非難。
サルコジ氏はサンテ刑務所の「VIP区域」と呼ばれる、ほかの囚人と接触しない隔離区域にある9㎡の独房に収容され、同氏の安全確保のために隣の監房に警護員が2人付き添う。ベッドと小さな机、シャワー、トイレ、通話可能な番号が制限された電話があり、追加料金を払えば冷蔵庫やテレビも備えることができるらしい。フィガロ紙によると、元大統領は『モンテ・クリスト伯』とイエスの生涯を描いた本を持っていくと語ったという。それらの本を読み切る前に仮釈放が認められる可能性もありそうだが…。
(し)
