薬物で眠らせた妻を72人の見知らぬ男たちに強姦させた夫と、強姦したとされる被告50人に対する裁判で、アヴィニョンの裁判所は12月19日、夫に懲役20年、その他の被告に禁固3年から15年の有罪判決を下した。
事件は、2011年~20年にヴォクリューズ県マザンでドミニック・ぺリコ被告(72)が1971年以来連れ添った妻ジゼルさん(72)を強い抗不安薬で眠らせ、ネットで募った男たちに無償で性行為をさせ、その様子を録画・保存していたというもの。72人による92回の強姦行為のうち、当時21~68歳の50人の身元が特定され、9月2日に始まった裁判の被告となった。妻に薬物を投与し強姦を組織していたペリコ被告にはこの罪状では最高の懲役20年が下された(うち3分の2の期間は仮釈放禁止)。
強姦罪または強姦未遂罪が言い渡されたその他の48人のうち、ペリコ被告に次ぐ重い量刑を受けたのは6回通った4人のうち、エイズウイルス(HIV)感染者であるにもかかわらずコンドームもつけずに性交に及んだ被告で懲役15年、その他の3人は懲役13年。2回通った被告6人には禁固8年から10年。最も刑が軽いのは罪状が強姦でなく性的暴行とされた2人で禁固3年。公判では、性的に奔放な夫婦のゲームだと思い込み、強姦したという認識はないとして30人が無罪を主張した。しかし、「意図せず過失から性交渉をした、強姦の意図はなかった」といった主張を裁判官は認めず、被告たちは皆、自分の意志を表現できないことが明白な被害者の肉体をもてあそぶことを選択したとして強姦、強姦未遂、性的暴行で有罪に処した。ただし、ペリコ被告を除くと、求刑よりも数年少ない禁固3年~懲役15年の判決となった。
性的暴行の裁判は原告への配慮から非公開になることが多いが、ジゼルさんは公開を求めた。性的暴行の被害者に連帯を示すため、「恥じるべき側は変わる」(恥じるべきは被害者ではなく加害者という意味)と発言する
姿は、女性への性暴行に反対する運動やフェミニスト運動のシンボルとなり、裁判はメディアや国民の注目を集めた。ジゼルさんを支援し性暴行や強姦の被害者を支援するデモも全国各地で開催された。19日の判決後、ジゼルさんは、判決を尊重し、未来を信じると発言。フェミニスト団体は、求刑よりも軽い判決を批判するとともに、女性を強姦する男性が罪に問われない状況はまだ変わっておらず、性的暴行に対するより厳しい法律制定、性交渉における「合意」についての教育の必要性を訴えた。政界でも左右を問わず、ジゼルさんの勇気を称え、社会のタブーを破る歴史的裁判と称賛された。
控訴が可能なのは判決から10日以内。ただし、市民が陪審員を務める控訴審では量刑が重くなる可能性もあると言われる。(し)