同性婚合法化10周年を祝うフランスでは、数々の祝祭イベントが開かれている。5月16日にはパリのマレ地区に、LGBTQI+を迎えるパリ市の施設がオープンした。フランス国内外の、性的マイノリティーに対する差別の犠牲者、社会生活の困難を抱える人々を迎え入れ、支援する。
建物はパリ市が所有するが、トランスジェンダーの人々へのアドバイスを行う「OUTrans」、非合法者として罰せられる国からの亡命者を支援する「ARDHIS」ほか、7つの市民団体が受け入れを担当する。LGBTQI+の差別には、社会的な疎外や、日常生活の困難のほか医療サービスが正当に受けられないなどの問題も付随することが多いという。そのため、ここに来れば健康、社会、法律相談が常に受けられるような体制が組まれる。
外国からフランスへ避難してくる性的マイノリティーの人々は年に1000人〜1500人だというが、フランスでも差別もまだ根強いのだ。市民団体「SOSホモ嫌悪 SOS homophobie」が16日、2022年の性的マイノリティーへの暴力行為に関する調査結果を発表したところによると、昨年は暴行が184件、前年度比で28%の増加となった。加害者は男性、被害者もゲイというケースが多く、公共の場で殴られる蹴られる、唾をかけられたり、物を投げられるなどの被害が報告されている。
前出の市民団体「ウトランス」のアナイスさんはオープニングのスピーチで「トランスの人たちに、ここに来る価値があなたにはあるんだよ、もう隠れていなくてもいいんだよ、と言ってあげたい」と語った。性的アイデンティティーによって、苦しみを抱く人々の心情を感じさせる言葉だった。
前ドラノエ=パリ市長(在任期間2001–14)は、元老院の議員だった1998年、ゲイであることをカミングアウトした最初の議員として有名だ。ジャン=リュック・ロメロ市長助役(冒頭の写真でスピーチする人)は、アウティング(本人の承認なしにバラされる)されたが、その後、自らHIVの治療を受けていることを公表している。パリ市で、LGBTQI+の権利のために闘いつづける政治家だ。
HIVの感染が広がり死者が増えるなかでも、政府はウイルスの正体や治療法に腰が重かった。それを動かしたのは、市民団体の強い働きかけ、デモなどだった。そして、40年前にフランスの研究者チームがHIVの正体をつきとめた。市民団体の活躍に期待したい。(六)
Bulle - lieu d'accueil pour les personnes LGBTQI+
Adresse : 22 rue Mahler , 75004 Paris , Franceアクセス : Saint-Paul