膨大な赤字を抱えたパリ首都圏の電気自動車(EV)カーシェアリングサービス「オートリブ(Autolib’)」の廃止が決まった。サービスを漸次縮小し、7月末に完全に終了する。
世界初の公共EVカーシェアリングが失敗に終わったのは残念だが、プジョーやルノーがパリ市でのフリーフローティング型(どこで拾って、どこで乗り捨ててもいい)の参入を早くも発表しており、カーシェアリングに新たな展開がもたらされそうだ。
オートリブはパリ市の構想により、パリと周辺47市がオートリブ・ヴェリブ・メトロポール組合(SAVM)を設立。入札で運輸・エネルギー大手ボロレグループが落札し、事業委託という形で2011年12月に開始した。
ボロレとSAVMによる充電設備・駐車場、情報通信システム、EVなどへの初期投資は約2億ユーロといわれる。オートリブ専用EV車「Bleucar」も現在では3952台に増え、参加自治体も103市、利用者は15万人に。
当初は年間5600万ユーロほどの収益を上げていたが、次第に赤字体質になり、ボロレによると現在の累積赤字は2億9360万ユーロ。ボロレから5月末、年間4600万ユーロの赤字補填を要求されたのに怒ったSAVMは、契約終了の2023年を待たずに契約解除を6月21日に決めた。パリ市・SAVM側は採算の目算が、ボロレ側は公共サービスの認識が甘かったこと、VTC(運転手付き観光車両)など他の新サービスとの競争に対応できなかったことが失敗の原因だと仏紙は報じている。
違約金3億ユーロを要求するボロレと、数千万ユーロとするSAVM側の争いの決着には時間がかかるだろうが、パリ市は早くも新サービスを模索している。プジョーは7月3日、年末までにEV500台のカーシェアリング「Free2Move」を開始すると発表し、ルノーも4日、9月からEV数百台による「ルノー・モビリティー」を開始(2019年中に2000台)するとした。詳細は不明だが、フリーフローティング型で、スマホのアプリなどで会員登録しなくても使えるフレキシブルな方式になりそうだ。
BMWやスタートアップも参入の意向を見せており、パリ市議会はすでに車1台につき300ユーロのライセンス料をカーシェア事業者に課す「Carte Autopartage Paris」案を4日に可決。オートリブのインフラも利用できるパリ市はこの新サービスでEV2万台の活用を目指す。委託公共サービスから自由競争の民間サービスへの移行とともに、7年間にわたるオートリブの時代は幕を閉じる。(し)