
トゥールーズの行政裁判所は2月27日、トゥールーズとカストルをつなぐ建設中の高速道路A69の環境保護認可を取り消す判断を下した。これにより建設は継続できなくなる。A69 建設に反対する環境保護団体らは勝利を喜んだが、国は控訴する構えだ。
これはトゥールーズとカストルを結ぶ国道126号線とほぼ並行に53kmの片側2車線ずつ4車線の高速道路A69を建設する計画で、すでに1990年頃には計画が持ち上がっていたが、2006年頃にカストルに本社・工場のある医薬品・化粧品製造のピエール・ファーブル社が事業と地域経済のためのA69の必要性を唱えて政界の賛同を得、2018年に公益性を認める政令が出された。2021年にA69建設・運営の入札が始まり、仏建設NGEの子会社Atoscaが落札、2023年3月に建設を開始した。しかし、高速道路建設による環境破壊や、一部の無料エクスプレスウェイがA69に組み込まれて有料(17€)になることに対し、06年頃から複数の環境保護団体や市民団体による建設反対運動が始まった。抗議運動は次第に拡大し、科学者や一般人の反対署名運動のほか、23年には数千人規模のデモ、建設地のいくつかの地点の占拠、ハンガーストライキなどにエスカレート。建設地の占拠を力で強制排除する治安部隊の弾圧もしばしば問題になった。
行政裁判所は、保護すべき生物とその生活環境に損害を与えることを禁止する法の例外を認める「公益のための絶対的な理由」は認められない上に、経済、社会、安全面のA69の利点は希薄として、環境保護の例外措置を認めることは違法だとした。この問題に関する国民議会調査委員会の報告者も務めたオート・ギャロンヌ県選出のクリスティーヌ・アリギ国民議会議員(環境保護派)は行政裁判所の決定を「歴史的勝利」と歓迎し、わずか20分の節約のために400haの耕作地や森・湿地を人工化するのはおかしい上に、1980~90年代に策定された大型インフラ計画は現代の気候問題や環境保護問題に対応していないとの声明を出した。
運輸省は控訴する構えだが、この控訴審には少なくとも1年かかるという。この判決により工事は続行できなくなる。Atosca社によると、総建設費4億5000万€のうちすでに3億€は費やされており、7割ほどの工事は終わっているという。A69 賛成派の地元の中道右派の国会議員は建設続行を可能にする法案の提出も考えているとした。
2016年のシヴァンス・ダム、2018年のリヨン=サンテチエンヌ間の高速道路A45、ノートルダム・デ・ランド空港など、行政裁判所が大型プロジェクトをストップさせる判決を下した例はこれまでにもあった。フランスでは無秩序に高速道路や空港をつくる時代は終わり、既存のインフラの修理や整備、鉄道の利用を優先する時代にシフトしつつあるのだろうか。(し)
