●”Il était une fois dans l’ouest”
邦題は『ウエスタン』。『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』などマカロニウエスタンのヒットを飛ばしたセルジオ・レオーネの渡米第一作、映画史に残る傑作。
クレジットタイトルも兼ねた冒頭シーン。荒野のど真ん中の駅に、見るからに悪漢の三人がやって来て、駅員をロッカーに閉じ込める。枕木を敷いただけのホームで待つ三人。音楽は一切なし。きしんだ音を立てる風車、風の音、沈黙、水滴の音、沈黙、超アップの汗だらけの顔にまとわりつくハエ…時間が 、ダリの絵のごとく暑さとともにダラリとのびる。風車の音に重なる汽車の音、汽車が止まる。緊張した三人の顔。誰も降りない。汽車が去り、帰ろうとした三人の背にハーモニカの音、そして上の写真のカットになる。瞬く間もない撃ち合い。シネマスコープの幅を思い切り使ったアップとロングを交錯させながらの大胆な映像モンタージュ。自然の音と沈黙の、危ういまでの均衡、そして銃声がこの均衡をうちくだく。エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』での「オデッサの階段」に劣らないこの一連のシーンを、ニュープリントで観ることができる幸せ。
復しゅうを誓うチャールズ・ブロンソン(画面いっぱいに広がる青い眼!)、血も涙もない悪役にヘンリー・フォンダ、惨殺された夫の遺志を次いで駅の建設に立ち向かう元娼婦にはクラウディア・カルディナーレ。この作品は、古いアメリカを背負って消え行く人間たちと、新アメリカを建設しようとする人間たちの、壮大なドラマでもある。(真)
Grand Action(5 rue des Ecoles 5e)で公開中。