バロック音楽バイオリンの名手の一人、キアラ・バンキーニ率いるアンサンブル415。彼らはすでにアルカンジェロ・コレッリのコンチェルト作品6の全曲盤でボクらを魅了してくれた。その響きの奥行きの深さ、上昇あるいは下降する旋律にこめられた一人一人の弦楽奏者の息づかい、そしてそこから立ちのぼる気品と格調の高さ。
今度の新盤は、ヴィヴァルディと同時期、同じヴェネチアで評判をとっていた、例のアダージョで有名なトマゾ・アルビノーニの『シンフォニア集』。シンフォニアというけれど、バイオリン2、ビオラ2、チェロ1、コントラバス1、ハープシコード1、テオルボ1という室内楽編成のソナタ6曲が収められている。
最初の曲のラルゴで、ボクらはアルビノーニの世界に導かれる。中音域が充実しているだけにしっとりとした響きがあふれる。太陽が顔を出したり、陰ったりするたびに、微妙に色合いを変えていくヴェネチアの運河沿いを歩いているような、ちょっとアンニュイでメランコリーな気分。その歩みも、アレグロになっても、決して現代のかけ足ではなく、ゆったりとした風情がある。ここに、アルビノーニの、ヴィヴァルディの技巧をこらした曲にはない大らかさな粋がある。一つの楽器になりきったようなアンサンブルは相変わらずみごと。録音も秀逸(真)