先日、創立120周年の記念事業の一環として、パスツール研究所が一般開放された。展示あり、講演会あり、実験アトリエあり、研究室の見学会ありと、盛りだくさんの2日間、ふだんも一般公開されている博物館も、入場無料だった。 まずは大ホール内の展示スペースを見学。今年は、1983年のエイズウイルスの発見で、本研究所からノーベル医学賞を2人も輩出したおめでたい年。エイズ研究のブースでは、壁に張られた資料を前に、研究者たちが熱心に説明を繰り返している。ブース前のテーブルにはコンドームが山積みだ。「いっぱい持ってって!」と白衣の研究者から爽やかな笑顔で声をかけられる。 次に実験アトリエが始まるというので紛れ込む。自分のレベルを考え、7歳の子供から体験可能の「DNAの準備:生命の秘密を視覚化」という実験を選ぶ。試験管の中に唾液を入れ、リーズ溶液なるものと食塩水、最後にアルコールを加えると、あら不思議、白いクラゲのような物体がフワフワと現れる。これが自分のDNAらしいのだが、実感はない。とはいえご丁寧にも、参加者全員に、DNAをミニ容器入りでお持ち帰りセットにしてくれたのがうれしい。 もちろん博物館にも足を運ぶ。ここはもともとパスツールが晩年の7年間を過ごした住居で、リビングや食堂、寝室などが残されている。家族の写真や絵画が飾られる思い出に包まれた空間だ。絵心のあるパスツールの手によるパステル画もある。クライマックスは、ローマ・ビザンチン様式の荘厳な雰囲気が漂う地下納骨堂。パスツールはパンテオン入りを認可されたが、彼の家族が拒否し、遺骸をここに納めたのだった。こうしてパスツールは、死後も研究所を間近から見守る無言の圧力、いや守り神になった。後継者たちが優秀であるのも、うなずける。(瑞) Musée Pasteur : 25 rue du Docteur Roux 15e |
実験アトリエでは研究者が紙テープをDNAに見立てて熱心に説明。
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