10月25日、フランスのNGOグループ〈ゾエの方舟〉(別名〈チルドレン・レスキュー〉)が、スーダン西部ダルフール紛争孤児と偽って103人の児童を、チャドのアベシェからスペイン旅客機でフランスに密出国させようとし、「児童誘拐・詐欺」容疑でフランス人メンバー9人とスペイン人搭乗員7人、ベルギー人機長(75)及びフランス人記者3人が逮捕された。 主犯容疑者エリック・ブルト「ゾエの方舟」会長(37)は、2004年スマトラ沖地震・津波の元救援隊員・消防士。協力者エミリー・ルルーシュ(31)も同救済に参加し意気投合。2004年からクシュネール現外相が「ジェノサイド」と糾弾しているダルフール紛争の難民を救済しようと、5月ごろから外務省にかけあうが軽視される。インターネットで「ダルフールの孤児を見殺しにするのか」の警句を流し、孤児の受入れ家族を募る。養子も可能と早合点した家族も含め約300所帯が2千ユーロ前後の支援参加費を支払う。アベシェからスペイン旅客機が児童を乗せて飛び立つ予定日の2日前、同団体にお金を支払った一家族が不審を抱き、外務省に連絡し事件が発覚、チャド警察が関係容疑者を逮捕。 この事件をデビ・チャド大統領が「児童性愛者や人身・臓器売買のための人さらい」と強く批難するなか、サルコジ大統領がデビ大統領とどう交渉したか不明だが、11月4日「どんな容疑であろうと大統領として被拘留者を連れもどす」と豪語し、記者3人と女性搭乗員4人を大統領専用機でフランスに連れて帰る。チャドの司法権を軽視する仏大統領のこの独断行為を「新植民地主義」とチャド市民は憤り、反仏感情が爆発。9日、男性搭乗員3人と機長も釈放され、最終的に仏人容疑者6人(医師1人)とチャド人共犯容疑者4人が起訴され、首都ヌジャメナに拘留。現地での裁判で「児童誘拐・詐欺罪」が確定すれば、被告らに懲役5~20年刑が科せられそう。 現地の赤十字やユニセフ、難民関係事務所によると、児童103人の90%はチャド東部アドレ村出身で孤児ではないことが判明。村民によれば、村長や部落のイスラム指導者が〈チルドレン・レスキュー〉は、チャド東部に児童を集め教育を保障する団体だと説き、児童がかき集められたよう。通訳の誤解か誤訳か、ブルト容疑者は「紛争孤児の救済」と主張する。駐留仏軍隊も、英語名〈チルドレン・レスキュー〉とメンバーらの消防士の制服に惑わされ、セシリア大統領元夫人の関わりも噂されたためか(11/15日、夫人は否定)ブルトらを信じ、軍用機で彼らの国内移動にも手を貸している。 仏外務省がこの事件を未然に阻止できなかったことへの批判と、ボランティア意識とNGOのあり方を問う声が上がっている。(君) |
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