サルコジ大統領の移民対策は、経済移民と呼び寄せ家族を半々にすることと(現在年間約16万5千人のうち9万人が呼び寄せ、経済移民は1万1千人で全体の7%)、不法移民を極力国外退去(2002年以来10万人退去)させること。 激しい論争を呼んだ移民規制法案は昨年採択された法案をさらに厳しくしたもの。それに加えて極右寄り右派マリアニ代議員が提出した修正案(呼び寄せ家族のDNAテスト条項)に、左派、文化人、市民が猛反対し十数万人が反対署名運動に参加。が、10月23日付パリジャン紙発表の世論調査によると、49%のフランス人がDNAテストに賛成している。 10月23日、上・下院(40人余の与党議員も反対・棄権)で成立した最終法案の主な項目: ●フランス語・知識のテスト:呼び寄せ家族・フランス人の婚姻者はビザ申請前にフランス語と共和国理念のテストを課せられ、非合格者は最長2カ月の研修が必要。 ●DNAテスト:戸籍謄本が完全でない国からの呼び寄せ家族は母子関係を証明するためにDNAテストを申請できるが、ナントの大審院がその必要性を確認した上で実施され、該当国とテスト施行期間はコンセイユデタが決定。 ●受入れ条件:最低給与SMICの1~1.2倍。受入れ者は市民としての「権利・義務契約」に署名。 ●雇用:人手不足の分野・地域では雇用契約を提示すれば県庁が特別に労働許可証を発行。 ●10年間の滞在許可証更新の際、申請者は無期限の滞在許可証の取得を申請できる。 ●人種・民族:統計・研究のためにだけ移民の人種・民族の違いを明示できる。 DNA論争の真っ最中、10月10日、ヴァンセンヌの森近くの元アフリカ・オセアニア美術館(ケ・ブランリー博物館に所蔵品を移す)が国立移民歴史博物館として開館した。移民史の変遷として、1850年~20世紀前半イタリア人・ベルギー人の大量移民農業従事者、20年代ロシア・東欧系ユダヤ人移民、30年代内戦によるスペイン人難民、60~70年代高度成長期ポルトガル・マグレブ系移民労働者、70年代呼び寄せによるアフリカ移民家族、ベトナムのボートピープル後アジア系移民…。19世紀からの白人カトリック系移民に次いでアラブ・アフリカ・アジア系移民が加わり多文化・多人種の社会を形成。会場には写真や移民一世らの持参品を展示し、移民と今日のフランス経済・社会の深い関係を再確認。(が、旧仏植民地と移民との関係には触れていない)。1998年サッカーW杯で優勝したフランスチームはその象徴だったといえる。 サルコジ大統領もオルトフ移民・統合・国家アイデンティティ・共同開発相も同博物館を無視しているようだが、150年間の移民の歴史によって、フランスのアイデンティティとはDNAによるものではなく、共和制による〈自由・平等・博愛〉が築いてきたものであることを認めざるをえないのでは。(君) |
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