昨年末、スイスのグスタッドに移住したジョニー・アリデーはベルギー国籍の取得認可を待ち、2年後にはモナコへの移住を計画中。億万長者ロックスターのボヘミアン生活は、フランス国税局から逃れるため。45年間歌手として10億ユーロの収益を生み出した彼の個人収入は1億5000万ユーロ(その他、大手眼鏡チェーンのCM契約料だけで年100万ユーロの収入)。フランス居住なら歌手としての所得税だけで年400万ユーロ、スイスでなら35万ユーロとケタ違い。 スター、歌手、スポーツ選手、モデル、企業主と、昨年だけで649所帯(1997年以来、約3800所帯)がベルギー、スイス、英国に移住。今年1月から高額所得者の所得税・連帯富裕税ISF(財産76万ユーロ以上に課税)・固定資産税・地方税などを合わせた最高課税率が所得の60%に下げられ、社会保障費を含めると71%に。近年、不動産の高騰で富裕税の被課税者が年々増加し、2006年は45万所帯から約37億ユーロを徴収している。 サルコジ大統領は親友アリデーや、離国した金持ちに祖国復帰を奨励するための減税案として、社会保障費(11%)も含め上限課税率を50%に制限するという。が、5年後または10年後に政権が左派に交替したらこの金持ち優遇策も元の木阿弥(オランド社会党書記長は「金持ちは嫌い」と公言)と、国外脱出組の重税への警戒心はとけそうにもなさそう。 またベビーブーマー、団塊世代の約50万人の中小企業主の引退時期をひかえ、相続税を逃れるため彼らの隣国への大量流出も考えられる。現行の税制では、経営者親族の相続税は75%免除している。新税制案では、中小企業に投資すれば5万ユーロまで富裕税が免除される。が、 資産170万ユーロ以上の相続税は40%と金持ちは我慢ならない(有産層は全所帯の10%にあたり、個人資産の46%を所有)。そこでサルコジ大統領は相続税を95%廃止するそう。配偶者やパクス協約者への遺産相続税も廃止し、また6年毎に子供に無税で贈与できる5万ユーロを15万ユーロに引き上げ、有産層の資産ぐりをさらに楽にしてやる方針だ。 また所帯の半数以上が持ち家を所有できるようにと大統領は、ローン利子の20%を所得申告から免除するという中流家庭にも嬉しいプレゼント。これら「革命的」減税策は購買力向上に不可欠と意気込む。が、良薬は口に苦し、荒療治の減税策で年150億ユーロの歳入減、そして国内総生産の64%、1兆1千億ユーロにのぼる公的債務もさらに増えていきそうだ。(君) |
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