フランスが真っ二つに分れて争われた欧州憲法条約批准の国民投票は5月29日、ノン54.87%、ウイ45.13%(棄権30.26%)でEU憲法を拒否! 北・中部、南部の工場・農村地帯では60~70%以上が反対、本土の9割の県に「ノン」のツナミが押し寄せる。仏社会党も真っ二つに割れ、オランド第一書記長の足元崩壊の劇震が直撃。 この20年来、欧州統合について仏国民はユーロ導入くらいにしか関心を示さず、種々の条約がEU官僚によって推し進められ、昨年5月、国民が気がついた時には25カ国に拡大、と民意無視のEU大陸が現前。その間、繊維業から電化、ハイテク産業まであらゆる分野の工場がポーランド、チェコ、ハンガリー、そして中国へとグローバル化は止らず、工場地帯にはリストラと長期失業者が急増。農業従事者も東欧からの安い青果類の大量流入で苦境に。シラク政権10年以来、失業率は10%以上(若年層20%)、貧困者は500万人を超し、貧富の差は広がるばかり…。 こうした最悪の社会状況のなかでシラク大統領をはじめメディア、知識・文化人、主要政党(社会党は分裂)がこぞってEU憲法の利点を力説すればするほど庶民の現実から遊離し、資本家・エリートのためのEU 像が定着。ちなみにパリ市民の66%が同憲法に賛成している。パリがいかにエリートの都市になっているかを示していよう。 一方、ルペンやドヴィリエら極右派リーダーが振りまく「ポーランド人の配管工が仏人の職を奪う」といった拡大EUへの恐れと、一般市民の生活不安とが絡み合う。そして共産党や極左グループが叫ぶ「EU憲法は自由競争経済の制定化」「公共サービスの自由化」「東欧の新加盟国に合わせ社会保障のダンピング」など、EU憲法反対キャンペーンに庶民は共鳴する。EU反発のツナミは、ビュッフェ共産党書記長の言う「1936年人民戦線、68年革命に匹敵する」力をもってシラク大統領とラファラン内閣を痛撃、同時にEUの暴走に歯止めをかける。 内にも外にも顔向けできないシラク大統領は、ラファラン首相の首を忠臣ドヴィルパン前内務相ですげ替え、与党UMPの鬼ッ子サルコジ総裁をそのまま内務相に再任。水と油の両人を柱に駒配置替えの新内閣だ。はたして2007年までもちこたえられるか。 仏のEU拒否のショックが冷めやらぬ6月1日、オランダ人も国民投票で61.6%が反対し、EUにダブルパンチ。25カ国中すでに10カ国が批准しているが、欧州統合が50年にして創立国2カ国の横やりに立ち往生。(君)
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