なぜか世界的にちょっと人気があった『スパニッシュ・アパートメント』から3年、セドリック・クラピッシュが、あのバルセロナのアパートをシェアしていたヨーロッパ各地からの留学生たちの5年後を描く『ロシアン・ドールズ / Les Poupees russes』。といっても物語はグザヴィエ(ロマン・デュリス)に集約されている。グザヴィエ君はフリーのライターとして食っていけるようになっているのだが、私生活=女性関係で安定を欠く。元恋人のオードレイ・トトゥ(今はシングル・マザー)やバルセロナ時代の同居人、セシル・ド・フランス(レズ)に甘えて暮らす。一方で、自叙伝のゴーストライターを頼まれたロシア出身のトップモデルと英語の脚本を共同執筆するウェンディー(ロシア人バレリーナと結婚することになった英国人で元同居人、ウィリアムの妹)、この二人の女性に惹かれて、どっちつかずのまま…。
30歳。大人になるって… ? 人生に、恋愛に、いつまでも夢をもっていたいけどそろそろ現実にも目を向けなくてはいけない。映画の主題として非常に好まれる「過渡期の男」をロマン・デュリスがまたまた好演。トニー・ガトリフ監督『Exils』、ジャック・オーディアール監督『De battre mon coeur s’est arrete』に次いでこれで3連発だ。そもそもは俳優志望でも何でもなかった彼がクラピッシュの『青春シンドローム』の時に街角でスカウトされ、今日では同世代で一番、フランス映画をしょって立つトップスターである。トリュフォーにとってのジャン=ピエール・レオーやアルノー・デプレシャンにとってのマチュー・アマルリックのように、クラピッシュ&デュリスも一つのジェネレーションのイコンとして末永く愛されて欲しい。(吉)
