アッバスさんは、サンマルタン運河沿いのイラン文化センター〈プーヤ〉(48bis quai de jemmapes 10e 01.4208.3847)の主催者。レッジフォード監督の “This is a place” や、ガトリフ監督の “Vengo” などに登場する映画俳優で、イランの伝統太鼓・ダフ奏者、歌手でもある。イランで政治的関与によって投獄された後、1983年パリに亡命。彼がパリに向けるまなざしは、彼の人生経験に培われた「地球が祖国」という、文化人的なヒューマニズムに溢れている。
—パリの色…
パリの第一印象は人種が混ざりあい、特に道路や美術館に色が溢れる「色の街」。イランは人々の服や監獄の「黒」の世界だった。「イラン人にとってはパリの街そのものがルーヴル美術館のようなもの」とアッバスさん。
—大学のような(家族のような)パリ…
パリ第8大学で映画を専攻し、ペルシャ歌唱を習うアッバスさんは「永遠の学生」。文化関係のお偉方からホームレス、社会を構成するさまざまな人々と交際して経験を共有し、学ぶことが好き。本当の家族とは連絡が途絶えているが、職場と自宅との間、わずか50メートルを10回ほど人と挨拶を交わしながら歩く。
—パリは「世界の花嫁」?
イランでは、パリの美しさと芸術、歴史などを讃えてこう呼ぶそうだ。しかし近ごろのパリは貧しい人が増えたこと、道には警察官が過剰なくらい徘徊していて不健全な緊張感を漂わせ、人間の信頼感をくずしているのが、「花嫁さん」のイメージに陰りを与えている、と思う。
(インタビュー:alex/訳:美)
最近のパリは通りに警察官が過剰なくらい徘徊していて不健全な緊張感…。
アッバスさんのおすすめ
●モンマルトル散歩
アッバスさんがよく散歩に行くのがモンマルトルの丘。パリコミューンの歴史が刻まれ、画家と観光客の「色」に溢れる場所だから。「テヘランは丘の斜面に作られた町。パリは平らで、斜面は地下にある地下鉄だ」
●北ホテル
アッバスさんの文化センター近くにある。カルネの映画にちなんだ建物の外壁は歴史的建造物だから、今でも昔の面影をとどめている。アコーデオンやジプシー音楽の演奏は地域性を感じさせるし、純なパリ下町スタイルのバーカウンターは陽気な雰囲気、10区を散策するには欠かせないスポット。
Hotel du Nord : 102 quai de Jemmapes 10e
01.4040.7878 http://paris.webcity.fr