●Oasis 自殺志願の男の過去をさかのぼる前作『ペパーミント・キャンディー』に打ちのめされ、個人的にイ・チャンドン監督は、最も新作を待ち焦がれていた一人だった。ようやく封切りの新作『Oasis』は、そんな期待をまったく裏切らない出来。 重度脳性麻痺の女性と前科者の男が心を通わせていく様を丁寧に描く、ヴェネチア映画祭監督賞受賞作だ。時に挿入される美しい幻想シーンが心にしみてくる。障害者を演じる女優ムン・ソリの演技は、「迫真」などとお決まりの言葉ではくくれない。人としての度量がないと押し潰されるだろうこの役を、どんな葛藤を背負い演じたのか、想像せずにはいられない。 ちなみに本監督は、今や祖国の文化大臣様。この影響で韓国の映画状況がどのように進化するのか、期待したい。(瑞) |
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● Souviens-toi de moi あの時ああしていれば、この人を選んでいれば、自分は今とは違っていただろうに。こんな後悔は誰もが経験しているに違いない。40代後半のカップルに訪れる危機。じき成人に達する二人の子供が親離れするなか、夫婦のそれぞれがこれまでの人生を振り返り、これからを思いやる。1980年代に『ビアンカ』として、そして2000年には作品『息子の部屋』の母親役としてN・モレッティのマドンナとなったL・モランテが、ちっともクールじゃない、嫉妬に燃える人妻役を演じ驚かせてくれる。反対に『マトリックス』など最近国際的な活躍が目立つM・ベルッチは、自分の愛を耐え忍ぶ渋い役でこれまた意外な好演をみせる。監督は、昨年『L’Ultimo Bacio』(仏題は『Juste un baiser』)でイタリア映画史上記録的な大ヒットを飛ばしたG・ムッキオ。(海) |
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● Intolerable cruaute 夫の浮気に対して起こした離婚裁判で涙にくれる人妻(C・ゼタ=ジョーンズ)と、夫を弁護する敏腕弁護士(G・クルーニー)の対決、とはいえ弁護士のほうが完全に分が悪い。なぜなら彼は人妻にぞっこんで、加えて彼女のほうが数枚上手だからだ。 アリゾナ、オハイオ、ニューヨーク、ミシシッピとアメリカのあちこちを舞台に個性たっぷりの話を披露してきたコーエン兄弟。今度の舞台はハリウッド。財産がものをいう世界の虚しさと、そこに存在しうる「愛」とは何か? 兄弟の辛辣なギャグが繰り広げられる。スマートでダンディーな三枚目、往年のC・グラントを思わせるクルーニーと、ゼタ=ジョーンズの軽やかでコミカルな演技は古き良きハリウッド製ラブコメディーの雰囲気をしのばせ、楽しませてくれる。(海) |
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