産業が労働力不足に直面。

 今日、フランスが経済低成長率(03年は0.2%)にあえぎ、失業率の再上昇に国民の不安が深まっている。その裏をかくように、経済・社会評議会(CES)は10月末に報告書で「移民に門戸(国境)を開き」、今より年1万人多く移民を受け入れるべきと指摘している。数年後にフランスの団塊世代の定年退職をひかえ、多くの産業部門が労働力不足に直面しているという。
 例えば、現在学士号以上の新卒者は年間15万人いるが、そのうち3万5千人は定年退職教師(年1万9千人)の補充に不可欠だ。しかし、中高校の教師志望者が年々30~35%減っているなかで、08年をピークに教師不足は切実な問題になりそう。また成長産業のホテル・レストラン業界(01年、レストラン業だけで7万3千人採用)も同様、04年にホテル業は4万人の新採用が必要で移民に頼るしかない、とホテル業連盟のダガン会長は強調する。
 いちばん深刻なのは医療界だろう。すでに公立病院の医師の3分の1にあたる約8千人は外国で免許を得た外国人医師で、救急医の25%、外科医の30%、当直医の50%は外国人医師が占めている。夏の猛暑による大量患者の対応で看護婦不足が問題になったように1万5千~2万人不足しており、01年以来スペイン人看護婦が450人採用されているが微々たるもの。 
 繊維業も生産効率を上げることにより労働力不足を補えるにしても技師不足は深刻だというから、教育評価高等評議会会長が危惧するように「外国から頭脳を輸入しなければならなくなる」のだろう。
 一方、数年前に急成長したコンピュータ界は、ユーロ変換時期にはプログラマーは引く手あまたで仏語圏からの移民も受け入れたのだが、現在職安に届けているコンピュータ関係の失業者は5万人。従って職業安定所は、現在の失業者数約300万人に、主婦や55歳以上の潜在失業者を加えると約500万人の予備労働力がひかえているので、彼らの再養成と職種転換のほうが現実問題だと主張する。
 来年5月からEUは25カ国となりシェンゲン協定地域がさらに東欧諸国にまで広がる。EUは北米を抜いて世界一の移民集中地域になるだろうとみられているなかで、加盟国にとってEU外からの不法移民の取締り強化が命題になっている。それに対しイタリアは移民割当て制を提案しているが仏独は反対している。
 コソボ紛争後、難民が大量にたどり着いたイタリアは約240万人の移民を受け入れ、さらに年内に不法滞在者65万人を認可する予定。イ政府は毎年移民の受入れ割当てを設定し滞在許可と同時に労働許可も与えている。労働力人口の増加により内需、国内総生産(+4%)が急上昇し、移民労働者の社会保障負担額だけでも30億ユーロにのぼる。イタリアは、移民に地方選挙の投票権を認めるかどうか議会で討議するまでに至っているのである。
 移民が人口の18.4%を占めるカナダや最近のイタリアを例にとるまでもなく、上記評議会の結論ははっきりしている。まず、十数万人の不法滞在者に労働許可を与え潜在労働力を労働市場に引き上げるのが、仏経済・社会保障財政のためにも当座の最善策と説くのである。(君)

EU諸国の正規移民数(’02年現在)
732万 ドイツ(人口の9%)
326万 フランス(5.1%)
246万 イギリス(4.2%)
146万 イタリア(2.5%)
137万 スペイン(3.5%)

ベルギー85万(8.3%) /ギリシア76万(7.6%) /オーストリア71万(8.8%) /オランダ69万(4.3%) /スウェーデン48万(5.4%) /ルクセンブルグ16万(35%)‥‥。
(Le Monde Economie: 03/11/4)


 

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