水圧で視覚神経を痛めてダイビングをあきらめたリュック・ベッソン少年は、17歳の時に、スキューバを使わずに深海92メートルまで潜水するジャック・マイヨールさんの姿を映画で見て、激しいショックを受ける。 父がダイビング教師だったマイヨールさんは、少年時代から、イタリア南部の海で潜水深度の記録を競い合う。人間嫌いでイルカを愛し、東洋的な瞑想を自分に課すという生き方は、当時エコロジーに目覚めた若者たちの心をとらえた。 1983年、この伝説的なダイバーはベッソン監督とマルセイユで出会い、映画『グラン・ブルー』に協力することを引き受ける。200人以上のスタッフ、9カ月におよぶロケ撮影で完成されたこの作品は、マイヨールさん役のジャン=マルク・バールやライバル役のジャン・レノの熱演で、フランス映画にはまれな大ヒットとなり、グラン・ブルー世代が誕生。 昨年12月、マイヨールさんは、エルベ島のカローネにある自宅で自殺をとげた。74歳だった。(真) |