70年代以来、コルシカ島をフランスの ”異端児”とさせてきた独立運動過激派による爆弾テロや暗殺事件(98年エリニャック知事殺害の主犯は未逮捕)と、島の経済に浸透するマフィア網。 8月7日、独立運動の頭脳とされてきたJ.M.ロッシ氏(44)と護衛が、武装した4人の男に射殺され、13日にはアジャクシオの地域経済開発局の前で爆弾が仕掛けられた車が爆発し建物の一部を破壊。9月7日には、1カ月前にロッシ氏が殺害されたバーで、店の共同経営者で元活動家ジウンチニ氏(35)が覆面した2人の男に射殺される。公共施設への一連の爆破テロや、分裂をくり返す民族主義者たちの派閥争いと殺し合いが島をいっそう孤立化させてきたといえる。 コルシカの独立を掲げてきた民族主義者たちを相手に歴代内相が今までくり返してきたアメ(譲歩)とムチ(弾圧)の政策とは裏腹に、ジョスパン首相は昨年11月以来、コルシカ地域議会議員ほか過激派代表者を一堂に集め、自治権拡大政府案の討議・交渉を進めた。そして7月28日、コルシカ議会議員51名のうち圧倒的多数44名(反対 2、棄権 5)が同案に賛成した。 政府案はまず、200年前にナポレオンが植民地的政策からコルシカを2分し南北 2県とした地域行政を一本化するため単一地域とする。2004年までは実験的にコルシカ議会に法律の改正権を認めるが、それには国会の承認が必要。憲法改正後の2004年以降は国会承認は不要となるが国会は最終的に無効にする権限を有する。 税制面では従来の特例を維持、相続税免除は15年内に段階的に廃止していく。 コルシカ語は幼稚園・小学校で必須科目とするが、父兄による免除申請は可能。 しかし、シュヴェヌマン内相は「過激派は暴力と独立を断念していない」と独立運動への警戒を崩さない。交渉の前提条件だった「暴力の放棄」を取り外し、テロ犯服役者の恩赦、釈放も譲歩しかねない首相の妥協路線に内相は強く反発。そして「立法権の移譲」は憲法の侵害と、首相と決裂、8月29日に辞任した。シュヴェヌマン内相は、83年に研究・産業相を辞任、91年に湾岸戦争に反対し国防相を辞任し、”辞任大臣” のイメージを強める。 仏革命が生んだ民主集中主義ジャコバン派の後継者シュヴェヌマン内相にとってフランス共和国はどこまでも「唯一、不可分」。そしてコルシカ議会への立法権の移譲は、現在モーロワ元首相が草案中の地方分権化案とは次元を異にし、バスクやブルターニュ、オック、アルザス、海外県など、歴史・文化的特殊性をもつ地域での地方分権主義を自治主義へ、さらには民族主義へとバルカン化し、フランスを分断しかねないと懐疑派は警戒する。 「一体性は画一性ではない。コルシカの島国性と特殊性にこそ、一体性と多様性が共存できる新しい道を探ることができる*」とジョスパン首相は、今まで誰も成功しなかったコルシカ問題の解決に挑む、テロの再発を懸念しつつ…。(君) *le Nouvel Observateur誌 (8/17 – 23) |
コルシカ島民は政府案をどう思うか 81% 幼稚園でコルシカ語を必須科目にすることに賛成 65% 南北2県の統合に賛成 78% 一部法律の改正権をコルシカ議会に移譲することに賛成 *CSA-Marianne誌が8/8-9日に515人を世論調査。(Liberation : 2000/8/14) |