パリのド真ん中のアパート。 N° 445 1999-10-15 ギヨーム君が住んでいるのは1区、メトロの駅でいうと “Louvre-Rivoli” に近い、超近い。1分とかからない。なにしろパリのド真ん中なので「どこへ行くにも簡単でありがたい」 大通りに面した建物の入り口から中庭へ入り、奥まで進んだら階段Aを昇る。階段のふもとあたりから空気がモワッとしているのは、暖房が階段、廊下まで行き届いているからだ。今年になって新装されたという階段は清潔、照明は煌々としている。 現在、愛猫シャシャとのふたり暮らし。60m2 のアパートの家賃は、管理費、暖房費込みで月5800フラン。ファッション誌のグラフィックデザイナーで、今はオフィスに出勤しているが、去年はここで仕事をすることが多かった。仕事場兼サロンのあちらこちらには、あるこだわりのもとに選ばれたのであろう小物たちが置かれているけれど、全体的には小ざっぱりした空間だ。一面の壁だけを赤にして、なんとも粋な感じにしたのが、憎い! 彼は写真も撮るのでホリゾントがある。巻いてあるホリゾントを3.2メートルの高さの天井から下ろせば、サロンが立派なスタジオとなる。ますます憎い。 静かなのも、この住まいの大きなメリットだ。2年前からここに住んでいるが、以前は目と鼻の先の2部屋のアパートにいた。そこは、サロンの3つの窓がルーブル通りに面していて素敵だったけれど、うるさくて、家賃も高かった。引っ越しを考えて幾つか物件をまわっていたら、すぐ近くのアパートの窓に『貸します』の看板が出ていたので電話、見学して決めたのが、現在の住まいだ。5階の窓からシャシャが足をすべらせて2回も中庭に落っこちた ( ! ) けれど、気に入っているこのアパートから、当分引っ越すつもりはない。幸いシャシャも無事だ。 「若いころから最近まで、オタク的に家にこもっていることが多かったけれど、今年運転免許をとってから世界が広がった」という彼は、車を運転して、ビアリッツへサーフィンに、フォンテーヌブローの森へキノコを探しに、ピカルディー地方へ朝鮮人参農園を訪ねに、と出かけていくようになった。快適な住居空間を持つだけでなく、知らない外の世界も開拓し、バランスがとれた充実した生活を送っている様子であった。(美) スノッブな気分で葉巻をくゆらす。 「パリの中心だから便利」がこの界隈の魅力と考えるギヨーム君、通勤その他、ふだんの移動手段はスクーター。さっとどこへでも行ってしまえるのがいい。逆 に、近所はあまりブラつかない。でも「日本料理屋さん『禅』は好きで、時々行くよ。美味しいし、お客さんはほとんど日本人、電話してもまずは日本語で応対 してくれて《ホンモノ》という感じ」 夜は閑散とした感のあった、リボリ通りとルーブル通りの十字路界隈も、最近、人のぬくもりが感じられるようになってきた。夜遅くまで営業のトルコ風サン ドイッチ屋さんも開店したし、深夜2時まで営業のカフェ『Le fumoir』もにぎわっている。ここはカウンターでもカフェが15フランするけれど、パリでは入手困難なスウェーデン製のペッパービスケット(美味しい のは丁字が入っているから)付きだから許せる。一回腰を落ち着けたら立ちたくなくなる心地よいソファーも大変結構。書斎風の奥の間は誰かの家のような、カ フェのような不思議な部屋だ。「法で禁じられているもの以外の吸うものなら何でも揃えている」というこの『喫煙室』カフェで、葉巻でも1本(25~ 110F)。葉巻に慣れていない人は”cohiba”、文学好きには “ガルシア=マルケス” を、とのアドバイスをいただいた。(美) *禅 : 18 rue du louvre 1er 01.4286.9505 月・祭日と日曜の昼休 *Le fumoir : 6 rue de l’Amiral-Coligny 1er 01.4292.0024 Share on : Recommandé:おすすめ記事 ヌイイ・シュル・セーヌに住む芸術家 ハンスさん流のシンプルで贅沢な暮らし Pierre Josse 世界を旅する写真家。 改装には苦労したけれど、結果には満足。 地下鉄Republique駅。54m2 。天井3.5m ルネさん方丈記。住まいは造船所。 地下鉄Filles du Calvaire駅。12m2 。家賃なし。 二つのアパートを一つのアパートに大改造。 地下鉄Jourdain駅。65m2。 家族構成が変わり、家を変えた。 Menilmontant駅。100m2(バルコニーを含む)。管理費約300euros。