父は法学者、母は医者の助手。14歳の時に街頭キャスティングの網に引っかかったヴァンサン・ラコストは、BD作家リアッド•サトゥッフの監督作『Les Beaux Gosses』(09) に主演。不器用でモテない脱力系高校生役でセザール新人賞候補に。「自分が面白いという意識はない。真面目にしてても笑われる。別に気にならない、むしろクールさ」。眠たそうな眼差しとマイペースなノンシャラン(呑気で投げやり)ぶりで、たちまち引く手あまたの個性派俳優に。学業と平行して映画出演を続け、大作『アステリックの冒険~秘薬を守る戦い』(09) は、バカロレアの勉強をしながら臨んだ。撮影中は女王役のカトリーヌ・ドヌーヴが運んでくれたケーキで、18歳の誕生日を祝ったという。
これまで天才映画監督(『JC Comme Jésus Christ』)や独裁者に恋する青年(『Jacky au royaume des filles』)となり、とりわけコメディ作品で鮮烈な印象を残してきた彼。だが現在公開中のトマ・リルティ監督『Hippocrate』では、悩める新米医師として医療ドラマも手堅くこなした。今後はミア・ハンセン=ラヴ、ブノワ・ジャコーなど落ち着いた作風の監督作の出演も控える。最近はお洒落で格好良くなってきたが、格好良くなり過ぎて個性が薄まらないことを祈るばかり。(瑞)