19世紀に生まれた詩人、小説家、劇作家のテオフィル・ゴーチエは ロマン派の先頭にたって活躍した人物である。日本に知られる作品としてはバレエ劇の「ジゼル」、小説では「キャプテン・フラカス」などがある。大成功をおさめた「キャプテン・フラカス」は、後に何度も映画化されている。本作品「御覧あれ、でも触らないで !」は、彼の生誕200年記念の2011年にみつかった小冊子に綴られていた戯曲で、舞台化は今回が初めてだという。
乗馬が好きなスペイン王妃の馬が暴走し、王妃を助けるために騎士たちが名乗りを上げる。ただ王妃の体に触れたものは即座打ち首、という厳しい法律が敷かれている。躊躇する騎士たちを前に困り果てた王女の付き人が「王妃様を助けてくださった方を私の将来の伴侶に」と宣誓する。付き人ベアトリクスの美貌にあこがれていたひとりの騎士、そして彼女の財産を狙うもうひとりの騎士が王妃を助けるために旅立つのだが…。ベアトリクスに恋い焦がれる騎士の愛の告白は、さすがロマン派のゴーチエとうなずくほど美しく情熱的。かたや財産と出世を狙う騎士はその狙いがあまりにもあからさまだからこそ滑稽で憎めない人物として上手く描かれている。演出家ジャン=クロード・ポンシュナは、イタリアのコメディア・デラルテのように各々の役割がはっきりしている戯曲中の登場人物に加え、「語り部」または舞台袖で役者に台詞を教える「プロンプター」ともいえる人物を登場させた。舞台袖に常に控えるこの人物の存在が初めは奇妙に思えて仕方なかったのだが、次第にこの人物の役割がなかなかの効果をもつことがわかってくる。どのような効果かはご自身の目で御覧あれ。(海)
12/31迄。水-土19h マチネ 日15h 10€-32€
Théâtre Le Ranelagh :
5 rue des Vignes 16e 01.4288.6444
www.theatre-ranelagh.com/