— 消防署見学会 —
パリ15区、グルネル地区の消防署で見学会が開かれた。消防車のはしご登り、ラペリング(ロープを使っての壁降下)など、消防士の仕事を体験できるコーナーは長蛇の列。手取り足取り指導する消防士はみな親切で、胸板厚くたくましい。子供はもちろん、ママたちの目も心なしか輝いている。
目玉は、車の切り取りデモンストレーション。事故車内に人が取り残されたという設定で、車体を一部解体し、人命救助するまでを見せる。消防士らは一斉にフロントガラスを割り、鋼鈑の車体をはがす。でも消防署なのだから消火活動も見たい。傍にいた消防士にその旨を訴えると、「これも大事な仕事。私たちは交通事故やガス漏れ、一刻を争う急病、自殺未遂や出産など、緊急を要する場合に出動します。火事は全体の2~3%に過ぎません」。たしかに思い起こせば、自分も娘が赤ちゃんの時に高熱で意識を失い、18番(Pompier)に電話して病院まで運んでもらったことがある。市民は実に様々な場面で、消防士にお世話になっているのだ。グルネル消防署の場合、昨年は103人の男性消防士と2人の女性消防士が約1万1千回の出動に当たった。一日平均30回の出動という多忙さだ。
だが困っていることもあるという。「料理して指を切ったなど、些細(ささい)なことで電話する人がいる。絆創膏(ばんそうこ)を付ければ済むことなのに」。かかってくる電話の4分の1は、消防署が対応する内容ではないとか。本当に必要な時に人員が足りなくなるのは困る。「だから本日の見学会は、緊急時だけ消防署に電話してほしいと世間にアピールする目的があります」。市民は、まず18番をかける前に、15番(SAMU 救急車)か17番(警察)で処理できないかを考えたい。もちろん火災、救急など、緊急を要する場合は18番へ。112 番は欧州統一緊急番号で、EU加盟国内共通で使える。旅行者が覚えておくと便利な番号だろう。消防士さん、いつもメルシー!(瑞)
人形を使って救命のイロハを勉強。
事故車に閉じ込められた人を 救出する演習が人気だった。
ラペリングというロープを使っての 壁降下体験も。