●Grigri
昼は写真スタジオのカメラマン、夜は麻痺した左足をものともせず、ダイナミックな踊りで喝采を浴びるダンススター。青年のあだ名は「グリグリ」だ。
チャド人監督マハマト=サレ・ハルーンは、前作『終わりなき叫び』で審査委員賞を受賞済みの実力派。「父の医療費を稼ぐために密売に手を出す青年グリグリの話」の企画を温めていたが、主演のスレマン・デメに出会い映画の成功を確信。社会の底辺に押し込められながらも前向きでエレガント、芯の強さを感じさせるグリグリを好演。チャドの文化大臣は「社会の現実を映している」と絶賛。願わくは、チャドに1館しかない映画館が増え、本作を鑑賞できるアフリカ人が増えることだ。(瑞)