フランスをはじめ、世界中のショートフィルムを上映する
決選投票によってフランスの次期大統領が、フランソワ・オランド氏に決まった直後の5月10日、在東京フランス大使館では「フランス文化センター日本」の設立記者発表が開かれた。これは東京、横浜、関西、九州の日仏学院とフランス大使館文化部を再編成・統合し、アジア最大規模のフランス文化機関となったことをアピールする場である。その特別ゲストの一人として招かれていたのが別所哲也氏だった。
どちらかといえばアメリカ的な雰囲気の別所氏だが、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン役を2003年から2011年まで演じるなど、フランスとの諸縁も深い。
別所氏が1999年からスタートさせ、現在ではアジア最大の短編映画祭にまで成長した「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」。また別所氏は2008年に横浜みなとみらいに短編映画専門の「ブリリア ショートショート シアター」も開館し、劇場支配人(インプレサリオ)としての仕事にも取り組む。
この何年かは、「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」とフランス映画祭とを効果的に結び付けて、フランスの魅力的なショートフィルムを紹介してきた。その中には先日アカデミー賞を受賞したジャン・デュジャルダンが出演する『Rien de grave(異常なし)』という作品もある。
「ショートフィルムというのは、若手映像作家の生み出す原石、デッサンです。ショートフィルムのフェスティバルを始めてみると、作り手からは『まだ自分にはいろんな他の作品もある、友人の作品もある』、観客からは『映画祭だけでなく、いつでも見られるような場所が欲しい』という声がそれぞれあって、これを今のシアターにするまで5年かかりました」と別所氏は語る。
ショートフィルムを128席のシアターで見せるのは、マーケティング的には本当に小さな試みだ。「でも評判になるショコラティエには、世界中からお客が集まりますよね。いいものであれば世界中にどんどん広がっていくのが21世紀でしょう」と微笑む。「フランスの映画には、アメリカ的な映画ビジネスとは異なる、アートとしての文法や作法があり、社会性や作家性を打ち出してきます。俳優も、出演する作品をエージェント任せにせず、短編長編関係なく、楽しければ参加する土壌もある。これがフランス人俳優の成熟した態度で、馴れ合いではない究極の個人主義なんだ、と思えます」と、別所氏。
カンヌ映画祭の短編映画のディレクターや、クレルモン・フェラン国際短編映画祭とも交流がある別所氏。欧米のみならず、アジア諸国、そして日本からの作品の発信など、その活動領域は広がっていくばかりである。(慎)
「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2012」
6月15日(金)〜19日(火) ラフォーレ・ミュージアム原宿
6月22日(金)〜24日(日) 表参道ヒルズ スペースオー
6月15日(金)・16日(土) TOHOシネマズ六本木ヒルズ(オールナイト・スクリーニング)
6月16日(土)〜30日(土) 横浜:ブリリア ショートショート シアター
(フレンチ・ショートプログラム:6月24日)
http://www.shortshorts.org