この界隈の住人なら知らない人はいないであろう、深夜まで営業しているお花屋さん。ムフタール通りの喧噪を避け、ひっそりと佇むその店先には、毎朝ランジス市場で仕入れる、生き生きとしたバラやユリをはじめ、色鮮やかな季節の花々が咲き乱れている。50年以上この場所で花と共に暮らす店主のヴィオレットさんは「花と結婚したようなものよ」と笑う。 店内には長い年月とともに蓄積された、彼女の思い出の品々が無造作に積み重なり、時間が止まったような不思議な世界が凝縮されている。一方、色とりどりの新鮮な花にあふれた明るい店先では、彼女を慕うご近所さんが世間話をしたり、読書をしたり、恋の悩みを相談したりと、ひとときの安らぎの時間を過ごしている。
デートに遅れて慌てて買いにくる人、恋を告白するために買いにくる人、ディナーの後に恋人にねだられて買っていく人、自分のために一輪だけ買っていく人…。一滴の香水でふと気分が変わるように、ほんの小さな花一つで心に暖かい灯がともる。花の様子を見極め、手際よく選別して作ってくれるブーケには、ストレートで力強く、ひたむきな愛がこもっている。(高)
Au pot de fer fleuri (Le Petit Monde de Violette)
Adresse : 78 rue Monge, 75005 parisTEL : 01.4535.1742
昼頃から夜中過ぎまで。無休。