フランスの夏はフェット・ド・ラ・ミュージックで幕開ける。ジャック・ラング文化相が始動させた音楽祭も今年で30年目。夏至の日は無数の路上ライブで国中が音楽で溢れる。私も以前は率先して楽しんでいたが、ミラが生まれてからは「わざわざ子供と人混みは」とご無沙汰状態に。ところが今年はミラ本人が「行きたい」と主張。一緒に区役所前の無料ライブに足を運ぶ。近所だからミラもすぐに友だちに会えた。ライブが始まるとまずは子供たちが踊り出す。客席から一段高い石段の上には「VIP」の張り紙付き白テントが張られ、役所関係者がさりげなく高そうなワインを飲んでいた。おじさんカントリーバンドの演奏後は、アンチーユ諸島出身とおぼしきバンドが登場。子供からの突然のリクエストに応えて、マイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」が流れると、会場は老若男女入り乱れてのダンス大会に。ミラも友だちと手をつなぎグルグル回ったり、アーティストの目の前に陣取り声援を送っていた。
翌日ミラが朝ご飯を食べながら「昨日は生まれてから一番楽しかったな」と呟いた。思わず「えー、これまでいろんな所に連れてったのに昨日が一番だったの?」と聞くと、「うん、ごめんね」とさらっと返された。母としては少々悔しくもあったが、こんな催しが身近なフランスは、やはり悪くないと思うのだった。(瑞)