俳優のパット・ボサールさんは高級アパルトマンが並ぶ7区エッフェル塔の近くはエコール・ミリテールに住んでいる。レオナルド・ダ・ヴィンチのような風貌でインパクトのあるパットさん。医者、弁護士、政治家、テレビ局のプロデューサーらが多くの近隣住人というこの周辺では際立った存在だ。この地域の住み心地について尋ねてみると「非常に住みやすいね! 平和だし、住人も商人も礼儀正しく気持ちがよい。ほとんどの地域では忘れられているが、基本的な敬意を持ってお互いが接しているな」。また、すぐ近くのクレール通りは質の良い食品小売り店が並ぶ歩行者専用通りである。少々値段は高くても身近で逸品が入手できるのは特権だ。品質に厳しい消費者が多いため各店も手を抜かないし、イメージだけで高い値がついている流行系の店はない。どれも手堅いのである。そして選択余地が多いのも大切なことと彼は言う。昔々パリ郊外に住んでいたころは「いつも同じパン屋、いつも同じカフェ…気性の激しいギャルソンと口論なんかしたら、もう次の日に行くカフェが他にないってのは悲しい。でもここには美味しいパン屋も気の利いたカフェもたくさんある。その日の気分で変えられるのは贅沢なことだな」
パットさんは俳優・監督エドゥアール・ベアの演劇団に属している。『Grand Mezze』や『Miam Miam』といった人気演目をパリ、地方、外国で演じてきた。公演のない時は映画の制作技術に関わっているパットさん。映画と演劇について尋ねてみると、「演劇には一つの空間があり一度演じ始めたらそこから抜けられないが、映画は撮り直しができる。映画はシーン毎に照明が俳優の光の当たり具合を調節するが、芝居では自分が光を把握した上で動く。舞台入り舞台出のタイミングは他の俳優たちとの息づかい、関わりを完璧に感じれないと全体を壊してしまうことにもなる。根本的に全く違うものだね」。カメラの裏と舞台の表、どうやら舞台の感動と悦びの方がパットさんスタイルのようだ。(久)
舞台のPat Boshardさん。© N.Lartigue
Edward Baer後列右から4番目とその座員たち。© N.Lartigue
周辺の瀟酒なアパルトマン。
ホコ天商店街の rue Cler。
舞台のPat Boshardさん。© N.Lartigue