フランスでも「家庭内暴力」の問題は深刻だ。命を落とす女性の数は2009年を例にとると140人、2日半に一人が亡くなっていることになる。
この劇の主人公は、暴力を振るう夫に耐えられず、10年前酒に酔った夫をバルコニーから突き落とした女性。事件は「自殺」として片付けられたものの、良心
のかしゃくにさいなまれ、夫の10回目の命日前夜に警察署へ自首することを決意する。この女性、迎える当直刑事と署に詰める警察官の3人が過ごす一晩が描
かれていく。
たどたどしく、長々と続く女性の告白。初恋の相手と家庭を築いたのはよいが、うつの気がある夫は酒に溺れ暴力を振るい、子供3人が
生まれても同じ状態が続く。もうだめだ、と離婚を迫ると自殺すると脅される…。黙って女性の告白を聴く刑事の頭にはひとつの考えしかない。「この哀れな女
性を法に裁かせることはできない」。刑事は女性の調書をとらず、警察での体験談や自分の心情などを話してきかせる。女性の気持ちがほぐれたかと思えば再び
「私を逮捕してください」と哀願が始まるけれど、時が経つにつれて女性と刑事の間に新たな関係が築かれていくのがわかる。もしかしたら…という希望が生ま
れる。女性は自首を諦め、刑事と共に新しい人生を歩むのでは…と。
この戯曲は実話をもとに書かれた、と女性役を演ずるエレーヌ・ヴォークワは語
る。女性との出会いの後、警察で働くのが嫌になった刑事は辞職し、知り合いにこの夜の体験を語った。それがこの戯曲のはじまり。女性と刑事は結ばれたのだ
ろうか? その答えはエレーヌにもわからない。(海)5月22日迄。金土21h 日マチネ17h。13€-24€。
Les Manufacture des Abbesses
Adresse : 7 rue Véron , 75018 parisTEL : 01.4233.4203
5月22日迄。金土21h 日マチネ17h