
フランスは猛暑による川の水温上昇のため、8月13日時点で原子炉6基が運転を停止し、点検その他の理由も含めて原子炉の非稼働率は20%近くになった。欧州他国でも河川の水位低下などによる原子炉の停止や出力制限が相次ぎ、将来の原子力発電への信頼に疑義が生じている。
猛暑による”クラゲ害”も。
フランスでは今年4度目の猛暑のさなかの8月13日時点で、北部アルデンヌ県ショー原発の原子炉2基および、北東部モーゼル県、南西部タルヌ・エ・ガロンヌ県、中東部のアン県とイゼール県にある原子炉4基の計6基が運転停止。ドローム県の別の2基が出力制限となった。
これは、川の水温や水位が一定以上になると、原発を冷却した後に排出される水が高温になるので、環境と生物多様性の保護のために原発停止または出力低下が義務付けられているため。このほかにも、10日には北部ノール県の海沿いにあるグラヴリン原発が、海水温上昇のために異常繁殖したクラゲが取水口に詰まって取水できないために原子炉5基が数日間停止した。
仏電力会社(EDF)は、猛暑が原因の電力生産低下は6月で1テラワット時(TWh)、7月で2 TWhで、2003年猛暑の5.5 TWhには遠く及ばず電力供給に全く問題はないとしている。

EDF(フランス電力)87億ユーロの「気候変動適応計画」
こうした影響により2035年以降には年間電力生産が1.4%低下する恐れがあるとEDFは試算している。より長期的に見ると、産業革命前に比べて2050年には気温が2.7℃、2100年には4℃上がると予測されるなか、南西部を流れるガロンヌ川は2050年には水量が2005年比で30~50%減、南東部のローヌ川は20%減になるという。その水量減少によって水力発電量も2.5%減になるとみられる。
EDFが6月に発表した、2040年に向けた気候変動適応計画によると、海外県も含めた既存の発電施設を気候変動に適応させるために87億€を投資する。そのうち原発分野では、すでにヴィエンヌ県シヴォー原発で唯一採用されている小型の追加冷却塔を設置することを計画しており、これによって通常の大型冷却塔だけよりも水温を3~7℃下げることができるという。
この夏はフランスだけでなく、他国でも川の水位低下や高温化により原発が停止する事態が起きた。とくにハンガリーではドナウ川の水位が異常に低下し、同国唯一の原発がほぼ停止状態に。ルーマニアでは、ドナウ川の中の大岩を爆破したり、岩を積んだ輸送船を沈めるなどして水位の上昇を図ったが、同国の電力供給の20%をまかなう2基の原子炉を一時を停止せざるを得ず、同国政府は企業や家庭に節電を呼びかけた。伊、ポーランドなどでは水位低下で水力発電も一部停止する事態となった。
変わらない原発依存
この夏の猛暑の繰り返しは例外的とはいえ、今後さらに猛暑の度合いが強まる可能性があると言われる。フランス政府は2月に2035年までのエネルギー計画を発表し、化石燃料の割合を2035年には30%に引き下げ、産業、建築物、モビリティ分野を中心に電化を促進する方針を明らかにした。その電力は脱炭素政策を受けて、現在、総電力供給の7割を担う原発を柱としつつ再生可能エネルギーも促進していくが、昨今の不安定な国際情勢からエネルギー供給を安定化させるために、明確に原発推進へ舵を切っている。
近年、マクロン大統領は既存の原子炉57基の運転延長、次世代原子炉EPR2(改良型欧州加圧水型炉)や小型原子炉の建設推進方針を示し、再生可能エネルギー推進の後退が指摘されている。しかも、2035年に向けた電化計画には水不足や干ばつの問題は考慮されていないと指摘するエネルギー専門家もいる。原子炉の一時停止は過去の猛暑でもあったが、今後は原発を時々停止するだけで克服できなくなるのでは、という懸念も浮上している。(し)
