
国民議会は7月15日、重篤な不治の病にある人が死を幇助(ほうじょ)してもらえる権利に関する法案を、賛成291票、反対241票で可決し、法案は最終的に成立した。これにより、フランスはスイス、オランダ、ベルギーなど、不治の病の患者の自殺幇助や安楽死を認める国の仲間入りをする。
国民の間に尊厳死や安楽死を求める声が近年高まるなか、マクロン大統領は2022年に「死の積極的幇助」を保証する法案の成立を約束した。2024年4月に政府案が国民議会に提出されたが、同年6月の解散により審議に至らず、その後のバルニエ、バイルー、ルコルニュの各首相がこうした法案に消極的だったため、政府案でなく議員が法案を提出した。ところが、国民議会では再三可決されたものの、右派の共和党が過半数を占める上院では3度否決され、4度目の国民議会の審議で可決され、やっと成立の運びとなった。
死のほう助を受けるには?
法案は、厳格な条件付きで自殺を幇助される権利を認める。フランス国籍者あるいは正規で安定的にフランスに在住する成人であり、「進行期あるいは終末期の、命に関わる重篤で不治の病」に苦しみ、「その病の苦痛は治療では緩和できず、耐えられない身体的、精神的な恒常的苦痛」を被る人が対象となる。
死の幇助を受けるには、「自由で明確な意思を表明でき、分別が大きく損なわれていないこと」も条件だ。致死物質投与の当日でも、自死の圧力が外部から患者にかかっていると医師が判断すれば、医師は即座に中止し、検察に通報する。自殺幇助願いを受けた医師は、他の医師や専門医や、患者をよく知る介護士らの意見を聴取したあと、15日以内に一人で決定を下す。医師の決定を告げられた患者は2日以内に意思を確定する。
患者は自分で致死物質を注射するのが原則だが、それが身体的に無理な場合は医師や看護師にしてもらうこともできる。医師や看護師は「良心に基づいて」幇助を拒否する権利がある。
反対派の言い分
法案に賛成派の多い左派や中道(与党)に対し、共和党などの右派や極右の国民連合(RN)は、自殺幇助を受ける権利の濫用や逸脱が起きたり、苦痛を緩和する終末医療のキャパシティー不足のために患者が死を選ぶのではないかとの懸念を強調した。
こうした懸念に応えるため、終末医療へのアクセスの平等を保障する法案が満場一致で国会で成立し5月26日に公布された。また政府は2024年4月、終末医療向けの予算を2034年までの10年間に60%(55億€)増額すると約束している。また、医師が決定する15日間と患者が意思を確定する2日間は短すぎるという反対意見などもあり、ラルシェ上院議長(共和党)と60人の上院議員、およびルコルニュ首相は法案成立翌日に憲法評議会に提訴した。憲法評議会は原則1ヵ月以内に判断を下す。
仏カトリック教会の代表者が「(この法案は)わが国の歴史との重大な断絶」と批判したように、信教上の理由から安楽死を受け入れがたい仏社会の伝統もあり、この法案が憲法評議会の承認を得て施行されれば、仏社会にとっては大きな転換となるだろう。(し)
