
フランス南西部ジェルス県で起きた11歳のリアンナさんの殺害事件で、逮捕・勾留されたジェローム・バレラ容疑者(41)が過去数回にわたって未成年への強姦や性暴行で告訴されていたにもかかわらず、全く自由の身だったことが判明。司法の不全が今回の事件につながったとして怒りの声が上がっている。
咎(とが)められなかった常習犯
中学生のリアンナさんは5月29日15時過ぎ、友人の父親であるバレラ容疑者の車に学校の前で乗り込むのを目撃されたのを最後に消息を絶った。憲兵らが180人態勢で連日捜索を行ったが見つからず、6月4日になって中学校から15km離れた古い農業用サイロで遺体が発見。翌日リアンナさんと確認された。
同容疑者は30日に身柄を拘束されたが、過去に数回、未成年強姦で告訴されていた経歴が明らかになったことから、非難の声が噴出した。容疑者は2017年に17歳の娘が男と性的関係を持ったと親に通報されたが、合意の上の性交渉とされて不問に。2020年に当時15歳の少女を強姦したと2022年に告訴されたが、証拠不十分で2年後に不起訴に。さらに、2025年8月には、10歳の少女を24年9月から25年5月の間に複数回強姦したと母親が告訴したが、これまでまだ男は事情聴取すらされていなかった。
この3件目の件は隣のオート・ガロンヌ県のトゥールーズ検察局から事件の起きたジェルス県オーシュの検察に移転されたが、オーシュ検察局が手続きを開始したのは今年1月末になってからで、事情聴取のための身柄拘束が近く予定されていたという。

警察や司法への批判の高まりを受けて、ニュネーズ内相は3日、2025年8月の未成年強姦提訴に関して警察と司法に落ち度がなかったかをダルマナン法相とともに司法監察局と国家憲兵監察局に行政調査を要請すると発言。ダルマナン法相も5日テレビに出演して、「司法はリアンナさんを守れなかった。司法の名において謝罪する」と発言した。しかし、警察や検察の対応の遅さを非難する声は収まらず、女性・子どもへの性暴行と闘う団体やフェミニスト団体らを中心に8日、パリ、トゥールーズ、リールなど約10都市で計6万人(警察発表)が抗議デモを繰り広げ、ダルマナン法相の辞任や、司法への予算増を求めた。
これら市民団体や左派・与党中道の国民議会議員らは、性暴行専門の警察や司法制度の創設、性暴行問題に関する司法官の研修、性暴行被害者の保護措置、関連する予算・人員増などを求める包括的な法律を早急に国会で審議するべきと求めている。法案は昨年12月に社会党議員が115人の議員の賛同を得て準備したが、まだ国会の審議予定には入っていない。
ダルマナン法相が「公的サービスの耐え難い、受け入れがたい機能不全があった」「職務怠慢があれば司法官への懲罰もありうる」など、司法官を非難する発言をしたことに対し、オーシュ裁判所の司法官と職員は、こうした政治家的な発言が国民からの糾弾の声につながっていると批判。オーシュ裁判所は19.2万人の人口をカバーするのに検察官はわずか3人で2025年は1万件の告訴を受け付けたと、職務過剰を訴えた。

MeToo運動などによる意識の高まりで、未成年への性暴行の訴えはここ10年で2倍になったとされ、警察や司法が対応しきれていない面も指摘されている。2025年8月に10歳の娘への強姦でバレラ容疑者を告訴した母親が9日、国、捜査官や検察官、そしてダルマナン法相の過失に対し提訴するとしており、国民の怒りはとどまることを知らないかのようだ。(し)
