
出馬か否か、注目の判決。
パリ控訴院は7月7日、極右の国民連合(RN)の欧州議員秘書に関する公金不正流用疑惑で、マリーヌ・ルペン国民議会議員(57)に禁固3年と3年9ヵ月の被選挙権停止の有罪判決を言い渡した。被選挙権停止期間が短くなって出馬が可能になったため、ルペン氏は即日、来年の大統領選挙出馬の意向を表明した。
この裁判は、RNの前身である国民戦線党(FN)が2004~16年の12年間にわたり党ぐるみで同党所属の欧州議会議員の公設秘書に党の仕事をさせていたという疑惑で、FNが不正に欧州議会から得た秘書の報酬の総額はおよそ410万€とされている。同期間に自らも欧州議員だったルペン氏は、他の党幹部とともにこの公金不正流用システムを構築し指揮していたとされる。
第一審判決

2025年3月25日の第1審では、ルペン氏は禁固4年(うち執行猶予2年)と罰金10万€、即時適用の被選挙権5年間停止の判決を受け、2年後の大統領選への出馬が危ぶまれていた。今回の控訴審判決は、執行猶予2年の禁固は3年、つまり実質的な禁固期間1年は電子ブレスレット装着による自宅監視措置が可能に。被選挙権停止は3年9ヵ月(うち執行猶予2年6ヵ月)で、実質1年3ヵ月は第1審から現在までにすでに消化しており、選挙への出馬が可能になった。
他の党幹部への刑も第1審よりはかなり軽くなった。この控訴審の判断は、第1審当時に議員に選挙出馬を妨げることは不当といった批判もあり、被選挙権停止の判断は有権者の選択の自由の保護に鑑みて判断されるべきという2025年3月28日の憲法評議会の見解に沿っていると一部の仏紙はみている。
「有罪」、でも、出馬。
ルペン氏は控訴審判決の数時間後、破棄院への上告と来年4月18日と5月2日の大統領選への出馬の意向を表明した。上告すれば、破棄院の判断が下るまで控訴審の判決は棚上げとなる。破棄院は遅くとも来年4月初めまでに判断を下すと表明しており、仮に控訴審判決が追認されても、そこから電子ブレスレットの装着開始までには通常4~5ヵ月かかるため、大統領選はすでに終わっている可能性が高い。万が一、ルペン氏が当選した場合は大統領特権で刑の執行は任期終了まで延期される。破棄院が控訴審判決を破棄した場合は、新たな裁判は大統領選挙前には実施されない可能性が高いが、その間、第1審の判決が仮執行されるか否かは法律家の意見の分かれるところで憲法評議会の判断を仰ぐことになるという。
ルペン氏の出馬表明に、昨年の有罪判決からバルデラRN党首が大統領選のRN候補になるものと考えていた他党はとまどいを隠せないようだ。大統領選への立候補をすでに表明しているフィリップ元首相(中道右派)は「ルペン氏は似たような罪(公金横領)で有罪になった人が政治活動を継続することを過去に厳しく非難していた」とコメント。「少しでもモラルがあるなら、ルペン氏は出馬を自ら断念するだろう」とエコロジストや社会党は強く批判している。
ルペン氏は出馬を表明した翌8日、当選したら首相にすると約束したバルデラRN党首とサルト県フレッシュの朝市を訪れ、早速、選挙戦の前哨戦を開始し、支持者と反対派のデモに迎えられた。ルペン出馬表明直後の世論調査では、大統領選第1回投票ではルペン氏に投票すると答えた人が36%、フィリップ氏19%(アタル氏の場合は15%)、「服従しないフランス党」(LFI)のメランション氏が15%と、ルペン氏が圧倒的な強さを見せる。はたしてルペン氏に被選挙権があるのか否か、有権者が真の判断を下すことを期待したい。(し)
