ネット新聞メディアパルト(有料)は7月10日、ニュース専門テレビ局「BFM TV」がサルコジ元大統領の不正選挙資金疑惑で、サルコジ氏に不利な仏・レバノン国籍の実業家の発言を改ざんして報じていたことを暴露し、カットなしの6分間の映像も16日に公開した。事実を伝えるべきメディアの情報改ざんに批判が集まっている。
この疑惑は、サルコジ氏が2007年大統領選挙の際に、リビアのカダフィ政権から約500万€の選挙資金の供与を受けたというもので、元大統領は2018年3月に収賄、選挙資金法違反で被疑者扱いになっている。仏・レバノン国籍の実業家ジアド・タキエディン氏が06年末~07年初頭に当時のゲアン内相官房長に二度、サルコジ内相(当時)に一度、計500万€の現金を渡したというのが疑惑を裏付ける重要な証言である。
同氏は武器売却に関わる手数料授受疑惑のカラチ事件で2020年に禁固5年の有罪判決を受けたためにレバノンに逃亡。有名人のメディア戦略の黒幕ミシェル(ミミ)・マルシャン氏が同氏へのレバノンでのインタヴューをお膳立てしたとされ、それはBFMTVと雑誌『パリ・マッチ』により2020年11月11日、わずか30秒間放映された。タキエディン氏は60万€の報酬と引き換えに、ゲアン氏にしか接触しなかったと証言したと考えられている。
BFMTVの当時の人気キャスター、リュート・エルクリエフ氏やマルク=オリヴィエ・フォジエル社長らが、「サルコジを救え」作戦の意図をもってインタヴュー内容を故意に抽出したり改ざんしたとメディアパルトは分析している。しかも、2人はサルコジ氏のプレス担当ヴェロニック・ヴァシェ氏とインタヴュー内容についてSMSのやり取りをしていたことを捜査当局もつかんでいる。
エルクリエフ氏やフォジエル社長は改ざんなどの疑惑を否定。しかしBFMTVの労組は同10日、メディアパルトの報道が事実ならフォジエル社長は知人のためにBFMの倫理をないがしろにしたと批判し、社長による明確な釈明を求めた。
一方、サルコジ氏の妻で歌手のカーラ・ブルニ=サルコジ氏は7月9日、夫とミシェル・マルシャン氏の間の仲介をしたことによりタキエディン氏の証言改変に関与したとして被疑者となった。「サルコジを救え」作戦については、今年4月の国営F2局のルポ番組でも取り上げられていたが、今回メディアパルトがBFMTVなどの具体的な関与の証拠を報じたことで、メディアと権力者との癒着が問題視されている。(し)