(左)6/12付 Libération 「恥」(右)共和党(LR)を破裂させたシオティ。
6月9日の欧州議会選挙での与党の敗北を受け、マクロン大統領は国民議会を同日夜、解散した。パリ五輪を目前に急きょ決まった総選挙。極右・国民連合(RN)の政権奪取の可能性もささやかれている。
RNは欧州議会選で与党連合の14.6%を大きく上回る31.5%の得票率を上げた。大統領は選挙結果が出た夜に議会解散を決め、わずか3週間後の6月30日と7月7日の総選挙の実施を決めた。議会で過半数を割って政権運営が困難であるとはいえ、与野党両陣営にとっても予期しなかった突然の解散。
そこに追い打ちをかけたのは、右派の共和党のシオティ総裁が11日、共和党とRNの選挙協力を決めたと発言したこと。これまでRNとの共闘を主張する声はあったが、極右との共闘はタブーとされてきた。独断でそれを反故にしたシオティ氏は執行部から除名され、同氏が党を相手取って告訴する事態に。結局、同氏は「右派連盟」の名のもとに共和党員を含む極右に近い人など62人の候補者を立てた。
左派は極右を阻止するために、欧州選では共闘しなかった社会党、服従しないフランス党(LFI)、ヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)、共産党が「新人民戦線」を結成。選挙区によっては立候補擁立の交渉が難航したが、エネルギーや食料品の価格据え置き、大企業への増税など国民の購買力向上を主な公約に掲げる。一方の与党連合は、フィリップ元首相がマクロンの議会解散を強く批判するなど結束とはほど遠い。
22日公表の世論調査によると、第1回投票でRNが約31%(+シオティ派4%)、新人民戦線29.5%、与党連合19.5%、共和党7%などとなっており、極右・右派が国民議会の過半数に迫ることも不可能ではない。
6月9日の欧州議会選挙での与党の敗北を受け、マクロン大統領は国民議会を同日夜、解散した。パリ五輪を目前に急きょ決まった総選挙。極右・国民連合(RN)の政権奪取の可能性もささやかれている。
「RNが勝ったら」という仮定も以前になく現実味を増してきている。バルデラ党首は、移民問題を最優先課題とし、移民を減らし、生地主義を廃し、外国人犯罪者やイスラム原理主義者の強制送還を容易にする移民法を国会に提出すると約束。前よりソフトになったとはいえ、RNのルペン氏は雇用、公営住宅、福祉などにおける「仏人優先」原則の憲法への記載や、役所、公営企業、公共サービスを担う企業への(二重国籍を含む)外国籍を持つ人の就職を不可にする立法を目指している。
極右阻止の市民団体や労組のデモも断続的に行われており、15日には全国で25万人(警察発表)から64万人(主催者発表)を集めた。選挙の行方から目が離せない。(し)