〜元側近の裏切り、選挙資金疑惑で新事実〜
来年の大統領選挙に出馬を表明しているニコラ・サルコジ前大統領(61)に、逆風が吹いている。かつての側近がサルコジ氏を批判する暴露本を出版したり、大統領選の活動資金の不正疑惑に関し、マスコミが相次いで新事実を報道した。
9月28日、ニュースサイト「メディアパート」は、2007年大統領選でのサルコジ氏の選挙活動資金の不正疑惑「リビア資金事件」について、新たな文書を入手したと報じた。ノルウェー当局が、リビア政府が650万ユーロをサルコジ陣営に送金したというリビアの元首相の手記を偶然発見し、フランス当局に知らせたという。
メディアパートはこれまでに、サルコジ陣営が、法で定められた選挙活動資金の上限を上回る5000万ユーロを、ムアンマール・カダフィ政権時代のリビア政府から受け取ったと報じている。元首相の手記は、資金の流れを裏付けることになる。
29日には、サルコジ氏が大統領在任中に顧問だったパトリック・ビュイソン氏が『人民の大義』と題した本を出版した。ビュイソン氏は、06年に若者の雇用に関する法案への反対運動が続いた際、警察を統括する内務大臣だったサルコジ氏が、黒人とアラブ人による白人への暴力には介入しないよう警察に指示したと主張。さらに暴力を振るう様子が報道されるよう、事前に週刊誌のカメラマンを呼んでいたとしている。
また、ジャック・シラク元大統領を「戦後の大統領で最も嫌われた大統領」と評するなど、同じ党の政治家に対するサルコジ氏の陰口も暴露している。ビュイソン氏はサルコジ氏を「流行り物が好きで」政治に対する情熱より「愛されたいという欲望」にとりつかれていたとしている。
国営テレビ局フランス2も29日、12年のサルコジ氏の選挙活動資金の不正疑惑「ビグマリオン疑惑」に関し、関係者への詳細な取材を報道した。支援者集会の運営を委託されたイベント会社の元オーナーが、依頼通りに実施すると莫大な金額になることを忠告したが、進めるよう指示され、選挙後、選挙活動資金の法定上限を超えない金額の請求書を作成し、残りは架空の名目で請求するよう言われたという。
リベラシオン紙は「友人、疑惑、厄介事…」(28日)という見出しで、一連のサルコジ氏への反発を伝えた。大統領の座に戻る道のりには、自らが掘った落とし穴がいくつも待ち受けているようだ。(重)