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5月29日、民衆運動連合(UMP)の改称に関する党員投票が行われ、83%の賛成票で新党名「レ・レピュブリカン(共和主義者党)」が承認された。さっそく、新党名を冠したHPには「«レ・レピュブリカン»は単なる党名ではない。共和国が日々後退していくのを嘆くすべての人々に向けた結集への呼びかけである」という「フランスのすべての共和国主義者へのアピール」が掲載された。
アナキストと王政復古主義者を除くすべてのフランス人を取り込もうとするかのような党名に、当初は党内でも反対意見があった。サルコジ氏がUMP総裁選前には新党名を投票に伏すと約束しながら、就任すると投票をしぶっていたのもそのためだ。だが、結局はジュペ派などの反対派も折れ、すでに5日には党執行部で承認されていた。
この新党名案が明らかになると、左派や左派系市民団体は「いかなる政党も国民の遺産である名称を我が物にすることはできない」と告訴したが、26日に却下された。ニュース週刊誌「マリアンヌ」(29日発売号)は、フランス共和国のシンボル、マリアンヌ像をサルコジ氏がつかもうとしている写真を表紙に載せて「共和国へのホールドアップ(強奪)」と題し、仏共和国憲法を守っていないくせに、「共和国の理想を私物化しようとしている」とかみついた。
数々の訴訟や汚職事件にまみれたUMPという名のイメージを払拭し、2017年の政権奪取に向けて党一丸となるのがサルコジ総裁の目論見なのだろうが、そうは問屋がおろさない。6月3日にも、ゲアン元内相らサルコジ大統領時代の側近6人が事情聴取を受けたばかりだ。大統領府が世論調査会社と交わした契約が競争入札を通っていなかったことから、公金乱用罪疑惑の捜査が進行中。特に前大統領の非公式顧問だったパトリック・ビュイソン氏の会社は07年に世論調査やコンサルタント業務で計150万ユーロの契約を交わしていた。
6月2日には、穏健派のコシュスコ=モリゼ副総裁代理を留任させて党内融和を図る一方で、党右派のヴォキエーズ書記長も留任させ、ベタンクール裁判で無罪になったばかりのヴルト元予算相を大統領選の責任者に任命して足場固めに必死のサルコジ総裁。しかし、大統領選の党公認候補を目指すジュペ元首相やルメール元農業相との確執は依然続く。サルコジ氏の演説を聞くと、現政権をこき降ろして蹴落とそうというポピュリスト的姿勢が鼻につく。何としても大統領に返り咲きたいという執念の毒気に当てられそうだ。(し)