Campo-Formio駅界隈(13区)
「オヴニーには感謝してます」と嬉しい言葉をプレゼントしてくれたのは、映画編集者の渡辺純子さん。フランス映画界で活躍する数少ない日本人女性のひとりだ。実は彼女が映画界との強いパイプを得られたきっかけが、何を隠そうオヴニーのアノンス。13年前に、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラの名編集者であるヤン・デデが、オヴニー紙上に俳優募集のアノンスを載せ、純子さんが応募したのが始まり。中年の俳優を探していたデデに、会うなり「若すぎる!」と一蹴されたそうだが、これをきっかけに、もともと編集者志望だった純子さんは弟子のひとりに。以後はフィリップ・ガレルやマノエル・ド・オリヴェイラ作品の編集に参加。在仏日本人監督の河村勇樹の作品も編集マンとして支える。
彼女の住まいは、13区のカンポ・フォルミオ駅近く。これまでサンティエ、マレ地区、バスティーユなど、観光ガイドが好む人気地区に多く住んだが、家賃の値上がりを機に3年前に引っ越しを決意。そして目を付けたのがこのカンポ・フォルミオ駅界隈だった。決め手の条件はやはり映画。「メトロでシネマテーク、バスで映画館が多いカルティエ・ラタンへと、地の利がよかった」
たしかにカルティエ・ラタンへは距離的には近い。だがこの界隈まで来ると近代建築が多くなり、町の雰囲気がかなり変わる。高層ビルのような学校の入り口には、今はなき高級車メーカー、ドライエの工場跡の碑が見える。パリ市が買い上げた広大な土地には、学校や老人ホームなど公共の施設が寄り集まる。純子さんの近所の通りが17番から始まるのも、都市開発で若い番号が消えたからだろう。そして崩れかけた古壁には、パリのステンシルアートの先駆者NEMOの作品が。おなじみの帽子男が、「取り壊さないで!」と、訴えながら居座っていた。ちょっとした路上観察だけで、町の歴史が生々しく浮かび上がる興味深い地区であった。(瑞)
●Oya
900種のテーブルゲームを揃えているカフェ。6€でゲーム+ドリンク付き。同種のカフェはパリでは唯一。ファンに支えられ来年で20周年になる。店長のパトリックさんは日本語が達者。店名の〈Oya〉は日本語の「(ゲームの)親」から来ている。
火~土14h-24h、日14h-21h 。月休。
25 rue de la Reine Blanche 13e
01.4707.5959
●Au Banquier
アルジェリア人スタッフによる飾らない町のカフェ・レストラン。水はパエリア、金・土・日は評判のクスクスが食べられる。パリでは破格ともいえるセットメニューは、昼11.9€、夜12.9€。ミントティーは2.9€。
火~日12h-14h30/19h30-22h30 。月休。
7 rue du Banquier 13e 01.4336.7346
●La Ferme Tropicale
〈Oya〉のスタッフがおすすめの爬虫類、両生類専門店。650m2のスペースにはカラフルなヘビやトカゲ、カエルがいっぱい。まるでパリの知られざるミニ熱帯動物園。研修会の実施、撮影用動物の貸し出しも。月~土10h-19h、日10h-18h。
54 rue Jenner 13e 01.4584.2436
高級車メーカー、ドライエの工場跡。
Bd Saint-Marcelに ジャンヌ・ダルクの像を発見。
〈La Ferme Tropicale〉で出会えるトカゲ。