Auteuil界隈(16区)
90年代初頭、フランスの人気お笑いトリオLes Inconnusは、エリートお坊ちゃんに扮し「♪オートゥイユ、ヌイイ、パッシー、これが俺たちのゲットーさ♪」と皮肉たっぷりにラップで歌った。それから20年、パリ西方に位置するオートゥイユは、今も閑静な高級住宅街のまま。しかし住民歴11年のフリーカメラマン、矢嶋修さんによると、オートゥイユはブルジョワのフランス人専用のゲットーではなく、意外と外国人でも住みやすいという。人種差別は感じないし、ツンケンした人にも出会わない。イタリア、レバノン、日本など外国料理の美味しいレストランにはこと欠かない。物価が高い印象はあるが、ハイパーマーケットのカルフールがあるから食費や生活費が抑えられる。しかも「オートゥイユは偽物のパリ16区」という俗説まである。「マルソー大通りやヴィクトル・ユゴー広場があって郵便番号が75116に当たる北側の地域は、本物のブルジョワが住む正真正銘の16区。オートゥイユを含む郵便番号75016に当たる南側は下町で、偽物の16区と見られることもある」と修さん。
しかし、オートゥイユは、パリ有数の美しいフォトジェニックな建物が多い地区であることは疑いがない。とりわけアールヌーヴォーの建築群で名高く、見学会も組まれるほど。実は修さんが住むアパートも、巨匠エクトール・ギマール設計の建物。日本人観光客もよく見学にやって来る。「でも見学者がいたら窓から顔を出さないように気をつけている。窓から日本人の顔が出てきたら、夢を壊すみたいで悪いから」
そんな修さんも、観光客に負けないくらいパリ散策が好きだ。特に車雑誌の表紙撮影を担当してから、普段も積極的にカメラを持ち歩くようになった。近くのセーヌ河岸もふらっと立ち寄る。ビルが少ないから、パリの空はとりわけ広い。寒空のもと、橋の横では飛んでは風に流され、また風に逆っては宙に浮かぶカモメの姿がちらほら。そんな光景を眺めて過ごすのも悪くない。「フランスは時間の流れが違う。東京と違って、昼間から成人男性がぷらぷらしていても肩身が狭くない(笑)。自由業者には特に住みやすいかも」(瑞)
●Chez Charbel
レバノン領事館で働く知人が、「パリで一番」と太鼓判を押すレバノンレストラン。上品な家庭料理で、一度食べたら恋しくなる味だとか。お持ち帰りのレバノンサンドイッチは4€。フライドポテト付きだと5€。月〜金12h-14h15/ 19h-22h15、土19h-22h15。
165 av. de Versailles 16e 01.4525.5758
●Parc Sainte-Périne
1977年以来、約4万m2のスペースが市民に開放され、緑豊かな住民の憩いの公園になった。秋は紅葉が美しい。12世紀初頭から革命時まではサント=ジュヌヴィエーヴ修道院の所有物。近年は怪しい住宅建設案が何度も浮上し、住民としてはちょっと心配?
39 rue Mirabeau 16e
●Dépositif
品揃えが素晴らしいと修さんが絶賛するヴィンテージショップ。ここでマークジェイコブスの試作品サングラスを入手。有閑マダムはブランドの服をパーティで1度着たら店に売ることがある。庶民はそんな無駄使いお洒落のおこぼれにあずかろう。
28 bd Exelmans 16e 01.4050.8889
火~土11h-13h30/15h-19h。
誰が住んでいるのかと うらやましいオートゥイユのお屋敷。
広告で撮影したジダン。「用意した靴が 小さかったのだが、彼は自分でお湯で 伸ばして履いてくれた。いい人!」