「私の自由よ 長い間 まれな真珠のように 君を大切にしていた。私の自由よ 君は僕を助けてくれた。もやいを解いて どこにでもいいから旅立つことを。危うい道を進んで果てにまでたどりつき 月光のもと 風にゆれる一輪のバラを 夢見ながら つむことを」
と柔らかなバリトンで歌ったシャンソン歌手ジョルジュ・ムスタキが、5月23日に亡くなった。79歳だった。エジプトのアレクサンドリア生まれで、両親はユダヤ系ギリシャ人。常に左派政党に投票していたムスタキだが、彼の歌った自由は闘って勝ちとるものではなく、地中海人間の本来の軽さに近いものか。最初の傑作は、1年間恋人関係にあったピアフに捧げた『ミロール』。セルジュ・レジアーニやバルバラも彼の歌を愛した。『異国の人』や『私の孤独』は、忘れられない名曲だ。